「試合がなくても人がいっぱい」「札幌ドーム時代と大違い」との声も。「エスコンフィールドHOKKAIDO」入場無料なのにガッポリ儲けが生まれるワケ
結果だけ見れば「利益が獲れたファイターズ」「満足したファン」「『使用料減免』という”税金の盾”発動で黒字を出せた札幌ドーム」と、これ以上ない「三方よし」「win-win」が成立した。こうして円満に札幌ドームを去れたことが、ファイターズの経営改善に繋がったことは、疑いないだろう。
夏は大稼ぎ、冬場は赤字 ボールパークの経営課題は「冬場の閑散期」対応

そんなエスコンフィールドにも経営上の難点はある。それはズバリ「冬」だ。
球場がある北広島市は「年間の降雪4.4m、平均気温-3.2℃」。日によって札幌~北広島間のクルマ移動に難渋するような吹雪に見舞われることもある。球場内外の飲食店や「PLAYLOT」、期間限定のスノーリゾート施設が営業しているものの、ほかのアクティビティは軒並み冬季休業。夏場には月間で60万人以上を記録したエスコンフィールドの客足も、1月・2月には10万人前後に落ち込む。
経営面で見ても、野球シーズン中を含む上期(4月~9月)で「売上196億円・利益70億円」を稼ぎ出し、オフシーズンの下期(10月~3月)は「売上74億円・利益はマイナス37億円」。「夏場の稼ぎで冬を耐える」収益構造は、もはやどうしようもないだろう。

そんな中でもFSE社は、非試合日や冬季での利益確保を模索している。2024年12月には初めての試みとして、野球場でのBリーグ(プロバスケットボール)公式戦(レバンガ北海道vsシーホース三河)が開催され、28日には19,462人(Bリーグ史上・観客動員数1位)、29日は15,113人(同2位)という、異例の集客に成功した。
平坦でない野球場のグラウンドに水平なコートを設置するために、移動式コートをBリーグの横浜ビー・コルセアーズから借りて北海道に輸送するなど、割に合った商売ではなかったかもしれない。それでも、「冬場の野球場でいかに収益を上げるか」という課題解決のために、FSE社は試行錯誤・チャレンジを繰り返しているのだ。
その間に、札幌ドームも新たな需要獲得のために総事業費10億円(札幌市負担)をかけた「新モード」を整備。23年度は公的イベントを中心に、23年度は何と3日も利用を増加させることに成功した。そんな札幌ドームと形は違えど、エスコンフィールドにとっても「イベント誘致・稼働日の増加」は、重要な課題だ。

こうして、「エスコンフィールドHOKKAIDO」を中心とした「北海道ボールパークFビレッジ」は、脱・札幌ドームから3年たった今も、何とか利益を上げ続けている。
ただ、その陰には年間約3~5億円とも言われる北広島市の固定資産税免除など、経営面で助けられている一面もある。こういった優遇が期限を迎えるまでに経営成長が続けばいいが、せっかく誘致に成功した北海道医療大学が、キャンパス・病院建設の資材高騰によって移転取りやめの検討を始めるなど、景気・物価高騰といった外的要因の影響が見受けられるようになった。
「世界がまだ見ぬボールパークをつくる」と謳われた新球場「エスコンフィールドHOKKAIDO」は、動乱の船出を乗り切り、安定した航海に入った。ただ今後は、約600億円の建設費用を捻出するために発行した、環境配慮型の「サステナビリティボンド」の期限も迫る。
多くのファンをワクワクさせつつ、「食品会社とプロスポーツ」が手を取り合い、20年、30年と安定経営を維持できるのか。ファイターズの2025年のチームスローガンそのままに、日本ハムグループ・FSE社の「大航海は続く」。
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