「試合がなくても人がいっぱい」「札幌ドーム時代と大違い」との声も。「エスコンフィールドHOKKAIDO」入場無料なのにガッポリ儲けが生まれるワケ
2024年3月に開催された「日本ハムファイターズIRデイ」(投資家・アナリスト向けの説明会)資料によると、札幌ドーム時代の2019年と、2023年の比較資料には「広告収入(×1.8倍)」「チケット収入(×1.5倍)」「飲食収入(従来ゼロ)」が大きく改善」と記されている。
まず札幌ドーム時代は、敷地内の広告から得られる収入や、飲食店からのテナント料は、基本的にドームの運営側(株式会社札幌ドーム)が得ていた。かつ、飲食店は自由に出店が許されず、”日本ハム”ファイターズの試合なのに、伊藤ハムの商品が堂々と売られる始末。ファイターズの試合だからといって、ファイターズ仕様で興行を打つことすらできなかったのだ。
いわば「プロ野球」という興行を打つうえで、「利益を大家(札幌ドーム)がむさぼり、かつ自由にさせない」構造では収益が上がらず、野球ファン以外の来訪が増加する訳がない。
これに加えて、札幌ドームで試合を行う限りは「850万円(入場者が2万人を超える場合は、850万円に当該超える入場者1人につき425円を加算した額)」(「札幌ドーム条例」より)という使用料がかかり、年間で13億円、諸経費込みで20億円以上という支出を余儀なくされていた。
自前保有であるエスコンフィールドでは、こういった経費もかからない。だからこそ、エスコンフィールドに移転しただけで「売上6割増・利益3倍増」という劇的な経営改善ができたのだ。

プロ野球にとって「高額な球場使用料が経営を圧迫」「球場が老朽化などで集客に不向き」といった事態はよくあり、「横浜DeNAベイスターズ」「オリックス・バファローズ」「福岡ソフトバンクホークス」などは球団運営会社・球場ごと買収したうえで、自社のプロ野球興行に向いた改修を可能とした。
しかしファイターズの場合は、ファイターズから提案された「指定管理者案」(ファイターズである程度自由に興行を打てるようになる)や環境改善案のほとんどを札幌ドーム(ならびに大株主の札幌市)サイドが握りつぶし、過大であると指摘されていた使用料の値下げ要求も、逆に値上げで応えた歴史がある。一言でまとめると、札幌ドームは「交渉自体すら時間が無駄な相手」とも言える。
潤った日ハムと、赤字転落の札幌ドーム
一方で、ファイターズの親会社である日本ハムは、飲食業に関するノウハウも持ち合わせる、食肉業界の国内トップシェア企業だ。これまで球場買収を行った3球団の親会社(DeNA=ゲーム、オリックス=金融、ソフトバンク=通信)よりもテナント運営・集客のノウハウを持ち合わせており、新球場と商業施設を組み合わせ、郊外に移転させても商業ベースにのせられると踏んだのだろう。だからこそ、「札幌ドームを去る」という選択肢を取ることができたのだ。
「エスコンフィールド移転」という経営判断によって、ファイターズは利益を獲れる企業体に変貌し、作り上げたボールパークは野球ファンにとどまらず、幅広い層を満足させた。
去られる方の札幌ドームは、自由なイベント誘致が可能となり、札幌市からの公的補助によるドーム使用料の減免・公的イベントの開催で稼働日を増加させ、最終的には4300万円の黒字に回復している(ただし、本業だけで見た営業損益は大幅マイナス)。
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