論理的な人には論理で。感情的な人には感情で。周囲を気にする人には空気で。それぞれに響く話し方がある。「意味がない」と反論する部下も、実は動かし方がある。相手視点に立てば、必ず道は開ける。
部下のタイプに合わせた話し方
たとえば部下が論理的に物事を受け止めるタイプならデータを使い、因果関係を明らかにして話してみる。
「Aをすれば必ずDという結果になるわけではない。しかしAをすることでBになる確率が高い。BになればCになりやすい。Cという状態になれば、Dという結果は生まれやすいだろう」
このように整理し、一つひとつ丁寧に説明する。すると、部下はなぜAがDという結果につながりやすいか理解でき、「意味はある」と判断されることだろう。
もちろん、部下は反論するかもしれない。
「BになってもCになるとは限りません。別の結果になる可能性だってあります」
そんなときも丁寧に説明しよう。
「確かに別の結果になる可能性はある。しかし1回や2回やるわけではない。これからずっと繰り返しやっていくんだ。確率論的に考えたら、Cになる確率は一定数ある。だからAをやる意味はあると思わないか?」
データで物事を判断するタイプであれば、このように話せば納得するはずだ。「たしかに……」「その視点がありませんでした」と謙虚に受け止めてくれるだろう。
しかし理路整然と話しても「納得できない」と言い続ける部下もいる。部下が論理ではなく、感情で動くタイプなのであれば別の話し方が必要だ。
私がよくやるのは、外堀を埋めるやり方である。感情で動くタイプの部下にはあまり長々と説明せず、部下の反論にも付き合わないようにする。
データを示し、ロジカルに話そうとすると余計に抵抗されることもある。だから「とりあえず組織で決まったことだからやってくれよ」と泣き落としでもいい。とにかく言い続けるのだ。
そのうち、中にはすぐに行動を変えてくれる人が現れる。論理的に理解して指示に従ってくれる人も出てくる。組織の半数近くが行動を変えるようになると、空気が変わってくるのだ。
そうなると状況が変わる。一部の部下が「こんなこと意味ないよな」と同意を求めても、「そうかな。課長が言う通り、意味はあると思うよ」、「みんなやってるんだから、やらないと」など他のメンバーがあまり同調しなくなるのだ。
このような空気が組織内に満ちてくると、「意味がない」と言っていた部下の気持ちもだんだん変わってくる。新刊『わかりやすさよりも大切な話し方』でも紹介した「集団同調性バイアス」の影響だ。
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