自動車の通史に学ぶ経営者の大局観の鍛え方 勝てる土俵と負ける土俵をどう見極めるのか
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自動車産業で、先行する欧州勢に米国が競り勝った要因はどこにあるのでしょうか(写真 : HIT1912/PIXTA)
もし未来が読めるなら、企業が採るべき戦略は自明となる。わざわざ負ける土俵を選んで、そこで勝負をかけたいと思う経営者はいないだろう。
では、経営者が正しく土俵を選ぶためには、どんな思考が必要なのか。そのヒントをくれる書籍が刊行された。
これまでの経営戦略論が避けてきた「未来予測」にあえて挑戦し、産業の未来を描こうとする書籍『通史で読み解く自動車の未来』から抜粋、編集してお届けする。
米国が欧州に競り勝った理由
企業間で明暗が分かれるとき、そこにはマクロの側面とミクロの側面があります。
勝敗が国籍で分かれるのは、マクロの典型と言ってよいでしょう。企業が繰り出す大技としての戦略で勝敗が分かれるのは、ミクロの典型です。
多くの職場ですったもんだしている日常レベルの意思決定は、勝敗に影響を及ぼすことなどめったにありません。
こと自動車業界に関して言えば、マクロの比重がきわめて大きいことは明白です。
個別企業の戦略とは無関係に、先行する欧州勢を米国勢が追い落とした事実から目を背けるわけにはいかないのです。
産業革命は英国が発祥の地で、まずは広く欧州に波及しました。
少なくとも19世紀後半の入口で起きたCivil War(南北戦争)まで米国は後進国で、産業革命を傍観するだけだったのです。
それなのに、米国は自動車で欧州に競り勝ちました。米国が勝った理由は重層的ですが、ここでは供給サイドの差を確認しておこうと思います。
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