自動車の通史に学ぶ経営者の大局観の鍛え方 勝てる土俵と負ける土俵をどう見極めるのか
まずは鉄道から始めましょう。
鉄道、電気、石油で米国が優位に
蒸気機関車は英国で登場したものの、狭い英国で真価を発揮するには至りません。
米国は、東部13州が独立して以来、西に向かって領土を拡張していった結果、19世紀の半ばには本土の版図が太平洋まで届きました。
そこに鉄道網を張りめぐらせると、地域ごとに特色のある産出品を内国交易することができます。
また、自動車を含む工業製品については比較優位を持つ拠点から全国に向けて出荷することで、規模の経済を利かすこともできます。
次に電気に目を転じてみましょう。
欧州では大学人が研究に勤しみ、緒戦をリードしました。ところが、企業家精神に満ち溢れる人々が、欧州の研究者コミュニティから排除されたのか、19世紀も後半に入ると米国に新天地を求め始めます。
米国で電気と言えば直流のエジソン(Edison)と交流のウェスチングハウス(Westinghouse)が話題を独占しがちですが、彼らが吸収合併していったベンチャーの多くは欧州からの移民が立ち上げたものです。
最後は石油です。
ジョン・D・ロックフェラー(John D. Rockefeller)が創業した米国のスタンダードオイル(Standard Oil)は、現エクソンモービル(ExxonMobil)などの源流にあたる会社で、全米をカバーする流通網を1870年代に築き上げていました。
それに対してオランダのロイヤル・ダッチ・ペトロリアム(Royal Dutch Petroleum)が創業したのは1890年、英国のシェル・トランスポート&トレーディング・カンパニー(Shell Transport and Trading Company)が創業したのは1897年で、内燃自動車の登場に間に合っていなかったのです。
欧米間で内燃自動車の普及スピードに大きく差がついたのは、不思議でも何でもありません。
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