「ノスタルジア」がポピュリズムの原動力になる理由 「失われた栄光」を求める感情が世界を動かすメカニズム

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これらの事例が示すように、ノスタルジアはポピュリスト政治家にとって、有権者の「喪失感」や「不満」に触れるための効果的なツールとなる。

彼らは、製造業の職や安定した社会構造といった「過去の栄光」を復活させると約束することで、有権者との強い感情的な結びつきを築く。

右派と左派、双方のノスタルジア

ノスタルジアは、政治的な右派に特有の感情だと見られがちだが、そうではない。

①右派のノスタルジア
トランプやブレグジットの例に見られるように、右派はしばしば「かつて偉大だった国」というイメージを利用する。このノスタルジアは、排他的なナショナリズムや反移民感情と結びつく傾向がある。
②左派のノスタルジア
左派もまた、過去の出来事にノスタルジアを抱くことがある。例えば、パリ・コミューンやソヴィエト連邦、イギリスの国民保健サービス(NHS)といった出来事や制度は、左派のアイデンティティの一部となっている。彼らは、これらの歴史を「社会正義」や「平等」があった時代として理想化し、現代の課題と戦うためのモチベーションにしている。

特にイギリスのNHSは、右派と左派の双方からノスタルジアの対象となっている。

労働党はNHSの創設を、保守党は「神聖不可侵」な制度としてのNHSを称賛し、いずれも現在の医療制度の財源不足や官僚主義を批判するために、理想化された過去のNHSのイメージを利用している。

このように、ノスタルジアは左右の政治的スペクトラムの両極に存在し、それぞれが異なる「黄金時代」を懐かしむことで、自らの政治的信念を強化している。

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