アグネス・チャンさん。70歳になった今「完璧を目指さなくなった」理由――限りあるこれからの時間を大事に使うためにしたいこと

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わが家も例外ではなく、さらに私は2人の姉とよく比べられました。1人は容姿が美しく、もう1人は学業優秀。そのせいか、私は子どもの頃、どこか自分に自信が持てずにいたのです。

母が「この子を妊娠したときは家計が一番苦しかったから、食べ物が足りなかったのかしら」と、冗談半分で親戚に言っていたこともありました。

ただ、それを耳にしたとき、幼い私にとっては、「私は劣っているのかもしれない」という思いが心に残ってしまったのです。母にとっては何げない一言だったのでしょうが、私は今でもその言葉を覚えているくらい、強く印象に残っています。

「私は私でいい」と思うこと

でも、いろいろな経験を積むなかで少しずつ、「私は私でいいのかもしれない」と思えるようになっていきました。

学生時代、ボランティア活動を通して誰かに感謝されたとき。ステージでお客さんから拍手をもらったとき。

そんな小さな経験の積み重ねのなかで、自己肯定感が育ってきたのです。そして、3人の子どもを育てた経験も、私の中でとても大きな支えになっています。

子育て中は決して順風満帆というわけではなく、悩んだことも、迷ったこともたくさんありました。でも今、子どもたちが無事に大人になって、私はこう思っています。「私は私なりに、子育てをやり切った」と。

実際、私の周りにも、自信に満ちた“無敵のおばあちゃん”になっている女性たちがたくさんいます。

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子どもが有名な職業に就いたとか、お金を稼いでいるとか、そういうことは関係ありません。「私は自分なりに精一杯育てた」と思えたら、それだけで十分なのだと思います。

子どもとの関係がうまくいかなかったり、今は疎遠になってしまっていたりして「私の子育て、どこが間違っていたのかな」と悩む人もいるかもしれません。

でも私は、そんなふうに自分を責める必要はないと思っています。

多くの人は、それぞれの状況の中で最善を尽くしてきたはずです。「私は私のやり方でやり切った」と思えることが、自分を肯定するための大切な土台になるのではないでしょうか。

子どもがいない人も、まったく同じです。

誰かの役に立てたと感じたとき。何かを自分の力でやり遂げたとき。そんな経験が、自分という存在を支えてくれる柱になっていくのです。

アグネス・チャン 歌手・エッセイスト・教育学博士

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あぐねす ちゃん / AGNES CHAN

ユニセフアジア親善大使・日本対がん協会微笑み大使・大阪経済大学客員教授

1955年8月20日香港生まれ。14歳で香港デビュー、17歳の時に『ひなげしの花』で日本デビューし、トップアイドルに。 上智大学国際学部を経て、カナダのトロント大学(社会児童心理学)に留学。85年に結婚、翌年の86年に長男を出産。89年、米国スタンフォード大学教育学部博士課程に留学。留学中の89年に次男を出産。94年に教育学博士号(ph.D)を取得。96年に三男を出産。芸能活動ばかりでなく、エッセイスト、日本ユニセフ協会大使、日本対がん協会「ほほえみ大使」など文化人として幅広く活躍。息子3人全員がスタンフォード大学に合格したことでも話題に。著書に『スタンフォード大に三人の息子を合格させた50の教育法』(朝日新聞出版)など120以上の著作を世界各地で出版。   

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