「あ、これはダメかも…」 死亡事故が発生しやすい危険な「対面通行・車線間中央分離帯ナシの高速道路」。危ないのになぜ放置されるのか
その仕組みは、比較的強度が弱い鉄製の支柱に、強靭なワイヤーロープを張る。クルマの接触とともに支柱はポキッと折れ、残されたワイヤーのたわみで衝突の吸収を受け止め、停車させるものだ。対向車線にはみ出さないようにするだけでなく、コンクリート壁やガードレールより衝突の衝撃が緩和される効果もある。
設置の際も、鉄製の支柱を道路に刺すだけのスペースがあれば良い。再設置の際にもかわりの支柱を立ててワイヤーにテンションをかける(いわゆる「ピンと張る」)だけで、もちろんコンクリート壁・ガードレールより安上がりなのが強みだ。
実際に、中央分離帯にワイヤーロープを設置した松江道(島根県・広島県)では、ワイヤーロープに接触したと見られるトラックが車線を越えずに横転するという事故が、今年7月に発生したばかり。たまたま対向車線を走っていた地元紙の記者(山陰中央新報)の方が「ワイヤーロープがなければ、対向車線との正面衝突を引き起こしていたかもしれない。命を救われた」と報じたことで、大きな話題を呼んだ。

ただ、ワイヤーロープを設置するにしても、高速道路だと1.25m程度の中央分離帯の幅が必要で、徳島道のような山あいのトンネル・橋梁が多いと、その幅すらない場合も多い。
また、一瞬で原状回復するラバーポールと違い、ちょっとした衝撃でテンションが緩んでしまうと、事故防止の意味をなさなくなる。対面通行だと1カ所の損傷ごとに通行止めにする訳にもいかず、深夜の修復工事などメンテナンスの手間もかかる。
画期的に見えるワイヤーロープの設置がなかなか進まないのは、「それすら設置不可能」「メンテナンス問題」による部分も大きいのだ。
遠回りルートの方が早い?対面通行ゆえに起きた”逆転現象”
せっかく開通したにもかかわらず、中央分離帯もちゃんと仕切られていない対面通行では、高速道路としてのメリットは薄くなってしまう。暫定2車線はいつ”暫定”でなくなるかもわからず、その存在は「がっかり高速道路」と、言えなくもない。
実は、先に述べた徳島道で、ちょっと変わった事例が発生している。対面通行であるが故に、ほかの高速道路に役割を取って代わられてしまったのだ。

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