男の子が貧困の影響をもろに受けやすい理由 すでに幼稚園から成熟度で女子に遅れをとる

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男の子のほうが恵まれない環境に敏感に反応する理由はいろいろあり、ひとつを特定するのは難しい。すでに母親の胎内にいるときから、男の子は女の子よりも極端なストレスに敏感で、大暴れする傾向がある。また、社会は男の子に、弱さを見せるなと要求する。低所得家庭の稼ぎ頭はシングルマザーであることが多いが、その影響は男の子と女の子で違うこともわかってきた。

貧困地区に育った男の子は、すでに幼稚園に上がる時点で、姉や妹よりも成熟度に遅れが見られる。そのギャップは年齢が上がるとともに大きくなる。男の子は停学になったり、学校をサボったり、標準テストの点数が悪かったり、高校を中退したり、少年犯罪を犯したり、行動障害や学習障害を持つ可能性が、同じ環境で育った女の子よりも高い。

姉や妹は優秀なのに

男の子は全般として、女の子よりも規律上の問題を持つ傾向にある。黒人とヒスパニックの場合、その男女差は一段と大きくなるが、その半分以上が貧困と関係していることがわかった。たとえば裕福な家庭の場合、男の子がテストで取る点数は、姉や妹と大差ない。ところが最貧困家庭では、男の子と女の子の点数差は3倍にもなる。幼稚園に上がる準備という点では、裕福な家庭の男の子は姉妹より3.1%ポイント低いだけだが、最貧困家庭では8.5%ポイント超の差がある。

オレゴン州ポートランドの低所得地区にある公立学校アスタースクール(幼稚園から8年生まで)では、この傾向を顕著に見ることができる。ここでは生徒の半分以上が貧困家庭の出身で、半分近くが人種的マイノリティだ。

一般に女の子は、幼稚園に上がるとき、じっと座っているとか、鉛筆を使うといった学校生活を送るための基本的スキルを身に着けている。だが、男の子の行動はまだ幼稚で、大人の話に耳を傾けたり、自分の衝動を抑えたりするのに苦労すると、スクールカウンセラーのジェフ・クノブリックは語る。

「男の子は非常に小さい頃から、『男らしくしなさい』と言われて育つ。強くあれ、泣くな、感情を見せるな、という意味だ」と、クブノブリックは言う。「男の子はそのせいで苦しんでいる。多くの場合、それは攻撃的な行動に表れる」。

小学校のときの問題は、長期的な影響をもたらす。小学校のときの停学処分と、高校中退の間には強力な関連性が見られる。しかし現代の経済では、協力や共感や回復力といったスキルが重要な役割を果たす。このため小さい頃に問題を抱えた少年の多くが、社会に出て行く準備がきちんとできていない状態で、社会に出て雇用市場での競争にさらされることになる。

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