男の子が貧困の影響をもろに受けやすい理由 すでに幼稚園から成熟度で女子に遅れをとる

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フィグリオらの研究は、フロリダ州保健局と教育局のデータベースを使って約15万世帯の兄弟姉妹を分析し、男の子が落ちこぼれる理由と考えられる要因を幅広く検証。その結果、男の子が落ちこぼれるのは、生まれつきの原因があるわけではないとの結論に達した。低所得の家庭の子供でも、生まれたばかりのときは、男の子と女の子の間に大差はない。

貧困家庭に生まれた子どもは、レベルの低い学校に通ったり、ドラッグや暴力が蔓延する地域に住んだりする可能性が高いが、こうした外的環境だけでは男女差の説明はつかない。性差を生むのは家庭環境なのだ。

「両親がそろっている家庭か、子育てに熱心な家庭が子供にもたらすプラス面は、特に男の子に顕著に見られるようだ」と、研究に参加したマサチューセッツ工科大学(MIT)のデービッド・オーター教授(経済学)は言う。

家庭環境を比較すると

そこで彼らは、片親か両親か、母親の教育レベル、住んでいる地域の所得レベル、そして学校の質に基づき家庭を比較した。しかしこれらの要因は複雑に絡み合っており、どれが最も重要な影響を与えるかは特定できなかったという。

それでも、男の子のほうが貧困家庭に育ったことによりマイナスの影響を受けやすい理由について、手がかりはあった。なかでも大きな要因は、貧困家庭はシングルマザーである場合が多く、男の子にとっては男性のロールモデルがいないことだ。

母親、とりわけシングルマザーは、息子よりも娘と多くの時間を過ごす傾向がある。これに対して男の子は、自分の感情をコントロールしたり、学校に集中するといったことを学ぶために、女の子以上に監視やしつけが必要な場合がある。

4人の子供がアスタースクールに通うシングルマザーのルーシー・アーメンダリスは、2人の息子は男性のロールモデルがいないことに大きな影響を受けていたという。長男のケニー(14才)は成績が悪く、しょっちゅう学校を休んでいたが、父親が関わりを増やした今は、状況は改善してきたという。

タイガー(4才/中央)と姉、ジョアンナ(12才/右)(オレゴン州ポートランドの自宅アパートにて) (写真:Carl Kiilsgaard/The New York Times)

これに対して、2人の娘ジョアンナ(12才)とセレーナ(8才)は優等生で、学校が大好きだ。次男のタイガー(4才)は、来年の秋に幼稚園に上がる予定だ。単語をいくつか読めるが、娘たちが同じ年齢の頃はもっと幼稚園に通う準備ができていたと、ルーシーは語る。しかしタイガーの状況も、父親の関与でよくなってきた。

政策当局者にとって、フィグリオらの研究は、少年の支援策を練るときは家庭環境を考慮する必要があること、そして貧困家庭の子供を支援するときは性別を考慮する必要があることを意味する。

一方、教育面では、男の子に落ちこぼれの傾向が見られたら、早期介入(質の高いプレスクールやロールモデル)が必要だ。そして家庭では、親が子供と過ごす時間を増やすことが重要だと、バートランドは言う。

だが、一人の稼ぎで家族を養うシングルペアレントにとって、その実行は容易ではない。

(執筆:CLAIRE CAIN MILLER記者、翻訳:藤原朝子)

(c) 2015 New York Times News Service

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