「規格外品を“名物”に変えた工場長の執念」「東京では売れず“ある地域”でバカ売れ」…ケンミン自販機が証明した“現場発イノベーション”の底力

✎ 1 ✎ 2 ✎ 3 ✎ 4 ✎ 5
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

実は、ビーフンの麺はすべてタイでタイ米を使って製造しているそうだ。タイ米は長粒種で、日本米のような粘りが少なく、水気が少ない。そのほうがビーフンに適しているのだ。

以前は日本でタイ米を輸入して製造していたそうだが、日本が米農家を守るために米の輸入をやめたり、高い関税をかけたりするなど、海外の米の輸入はどんどん難しくなった。そこで1987年にタイに工場を設立したという。

「日本米で、むりくりビーフンを作っていた時期もあります。でもそうなると、米以外の材料を混ぜないと作れません。ケンミンは『米だけで安心な麺を作りたい』という想いが強く、それができないなら意味がない、とタイに工場を作ったんです」

日本で行う作業は、通常の乾麺であれば、タイから届く麺に添加するスープを詰め合わせる程度。自動販売機の冷凍食品の場合は、丹波篠山の工場で調理し、冷凍して袋詰めしている。

だから、日本米の値上がりの影響はまったく受けないそうだ。とはいえ、タイ米も値上がりしているそうで、原価率は少しずつ上がっている。また、タイから輸入するため、為替レートにも影響を受けやすい。円高はいいのだが、円安になると原価が跳ね上がる。

加えて、日本の電気ガス水道代、人件費も上がり続けているため、値上げせざるをえない状況だという。自販機のビーフンも場所にもよるが、2021年の登場時から比べると、約100円値上がりしている。

揚げ茄子、鶏ミンチ、たけのこ、きくらげ、赤ピーマンが入った「麻婆はるさめ」。もちもちの食感と程よい辛さでごはんが進む(筆者撮影)

年間3500万円のビジネスに成長

自動販売機の業績は順調で、2024年は、21台合計で3500万円を売り上げた。売れるのは平日よりも休日。時間帯は、夕方から夜、16時~20時頃が最も売れるという。

次ページ「もしものためにストックにしてほしい」
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事