冷凍ビーフンの賞味期限は約1年と長いのだが、スーパーには、「賞味期限が2/3以上残った商品を納品する」という暗黙のルールがある。つまり、生産から4カ月目までの商品しか納品できず、8カ月分が残ってしまうのだ。
賞味期限内なのに売ることができない。ながらくそのジレンマに悩んでいた工場にとって、自動販売機はひとつの救いだった。残った商品を「ワケあり」として販売しはじめたのである。賞味期限に余裕があるものとは価格を分け、「100円値引き」したところ、よく売れた。

残ってしまった商品が、自動販売機で売れる――。生産者の気持ちとして、「捨てなくていい」ことは救いとなった。そして、客からも喜ばれる。ウィン・ウィンの関係が生まれたのだ。工場長のひらめきが、在庫を「買いに来たくなる限定商品」へと昇華させた。
これに喜んだ工場長は、包装の接着がうまくできなかった商品や、味付けが少し失敗した商品なども「ワケあり」として販売するように。「賞味期限があと数日」「包装の接着がうまくできませんでした」など、ワケありの理由も律儀に書くそうだ。
その正直な説明が、思わぬ効果を生んでいる。自販機のそばを通りかかる人は、その説明につい足を止め、「どんなワケがあるのか」と覗き込んでしまうのだ。デジタルサイネージにはない人間味が、かえって注目を集めているのかもしれない。
工場長の行動は、誰に命じられたわけでもない。「捨てたくない」という想いが、仕組みを変え、価値を生み出したのだ。
乾麺もジュースも。「なんでもありかい!」
工場長がせっせと「ワケあり」商品を出したことで、丹波篠山工場の売れ行きは順調に伸びた。また、思わぬところから注目を浴びるようになる。
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