「“木彫り”のだんご」「本物のだんご」はどっち? ヨックモック、うなぎパイ…木でできた食べ物に驚きまくり
そんな僕の執着もあってか、母はこだわりを持って料理をしてくれました。母の料理は本当においしくて、よくある家庭の定番料理であっても、下ごしらえや調理工程など、すごく丁寧につくってくれていました。普通のポテトサラダに見えるものも、つくり方を母に聞いてみると、細かな下ごしらえの工程が多くて驚いたことがあります。
僕は兄と妹の3兄妹ですが、部活をするような年齢になり、それぞれの帰宅時間がバラバラになっても、母は一人ひとりの帰る時間に合わせてあげ物をその都度あげて、できたてを食べさせてくれていたんです。
父はというと、夕食が魚のお刺身の日は「マグロはこのスーパー」「白身魚はこの市場で」と、遠く離れたお店やスーパーをはしごして買ってきてくれるなど、僕たちに「おいしい」を体験させるためにこだわってくれていました。
そのお菓子を食べることから始める
そんな両親のこだわりと家族への思いやりを感じながら育ててもらったので、僕ら兄妹はみんな舌が肥えていて、焼き方や火加減、素材の違いなど、料理をおいしくするための些細な工夫を敏感に感じ取るようになっていったんです。そして料理の感想を延々と言い合いながら、食事をしていました。

このとき、ただ「おいしい」と言うだけではなく「今日の玉ねぎは、シャキッとみずみずしいね」「このマグロの赤身は弾力がすごいね」「このヒレカツはお肉に甘味があるから、お肉の断面のところに少し塩をつけて食べると、おいしさが引き立つね」などと、五感で料理を味わい、細かなところに注目し、具体的に感想を言い合うのがわが家の食卓でした。
大人になってからは、自分もこだわって料理をするようになりました。家族にも一番おいしい状態を届けたいから、食材選びから調理方法にもこだわって、できたてを食べてもらっています。
「おいしいものを、一番おいしい瞬間に味わいたい」というようなこだわりのある家庭で育ったことが、僕が食べ物を観察する視点、食べ物の作品をつくるこだわりにつながったのかなと思います。
たとえばお菓子を木彫りでつくるときは、まず、そのお菓子を食べることから始めます。
「サクサクだな」「この端の部分の、カリッとした食感が特徴的だな」と、おいしいと思うところをまず五感で観察します。それからお菓子をもう一度見てみると、たとえば食感を出すためにスナック菓子の中が空洞になっていたり、その部分だけ薄くつくられていたりするのがわかります。
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