田村:この長寿クリニックの理念は、エビデンスベース、パーソナル。とにかく一人ひとりを徹底的に検査して、患者の”各部位”の生物学的年齢と老化の傾向(食べ物、運動、心理などについて)をエビデンスで特定したうえで、老化を遅らせる手助けとなる個別プランを立てていきます。個人の詳細なデータをもとに、今あるエビデンスを最大活用してパーソナライズされた医療を実施していると言えます。
生物学的年齢は老化の状態を示すもので、その人の遺伝的特徴はもちろん、食習慣、運動量、睡眠、血糖値などのバイオマーカーが影響します。私たち一人ひとりの体には多様性がありますから、予防医療はやはりパーソナルでなければ意味がないと思っています。
窪田:「One size fits all(万人向け)」ではない予防医療を実践されているのですね。
田村:例えば、「若い」といっても、その若さが何を根拠にしているのか。科学的に判断されます。肌や髪、骨、心臓、血管、遺伝子……と、あらゆるもので実年齢との比較を出していく。そうすると、年齢よりも若く見えるような人でも、必ずしもすべての項目が「若い」わけではないことがわかります。
ウェアラブルデバイスで24時間数値を測定
窪田:それは面白い! 田村さんの数値はどうでしたか?
田村:私の場合、実年齢よりも若い数値が出たものが多かったのですが、腸年齢は実年齢よりも老化が進んでいることがわかりました。揚げ物や肉が好きなので、その影響ですね。
長寿クリニックでの予防医療は、24時間人間ドックを受けているようなもの。時計と指輪血糖値マーカーのウェアラブルデバイスで、血糖値や睡眠時間、運動量、ストレスの度合いまで、24時間365日データを測定し、それをクリニックの専門スタッフが分析してくれます。食べたものの写真もタイムスタンプして共有します。血糖値マーカーの数値が24時間共有されていますから、何をいつ食べたかも嘘がつけません(笑)。
窪田:ウェアラブルデバイスを使って、常にデータを取り続けているのですね。
田村:そうなんです。人間ドックは1年に1回受けるのが一般的だと思いますが、それだとその瞬間だけ一時的に数値が高くなったり、低くなったりすることもあるわけです。でも24時間トラッキングで数値を測っていれば、傾向がわかる。
体調でもビジネスでも、瞬間値より「傾向」のほうがずっと大事です。その24時間・365日の傾向データを見ながら、定期的にアドバイスをもらえるのが画期的な点だと思います。