日本では時間通りに、サービスや観光も予定通りに、何もストレスなく進むのが当たり前。しかし、たとえ豪華列車だとしても、想定外のトラブルがいくつも発生した。
まず出発が旅程表から予告なく1時間遅れた。
次に、Wi-Fi完備とあるのにつながらない時間が多く、つながっても速度がかなり遅い。テレビの電波も悪く、見られない時間が長かった。もちろん、何もない大地を走っている間、スマートフォンの電波はずっと圏外だ。
2日目の朝は、洗面台の蛇口をひねっても水が出ない。トイレの水も流せない。バトラーに尋ねると、前夜に風呂の湯が出しっぱなしになっていた部屋があり、車内の水がなくなったとのこと。近くの駅で給水して復旧したものの、限られた資源の中で走っていることを実感したできごととなった。ちなみに、給水自体は定期的に行われている。
最大のトラブルは、走行中に架線が切れて列車が緊急停止したこと。
3時間近くかかったが、技術者たちのおかげで復旧。ただし、プレトリア駅の出発は1時間遅れ、架線トラブルで3時間近く停まっていたにもかかわらず、ケープタウンには1時間半遅れで到着したという謎が残る。
根強く残る貧富の差も目の当たりに
南アフリカは、世界中にいる高所得者層向けのラグジュアリーな旅先として人気が高まっている。ブルートレインは、豪華なサファリロッジと並ぶ、彼ら向けの観光資源の代表格だ。
その一方で、国全体に根強く残る貧富の差がすぐそばにあることに気が付く。沿線にはトタン屋根のバラック小屋が並ぶ集落があり、周辺の線路にはゴミが散乱している。
架線トラブルで緊急停止している間は、技術者だけでなく警備車両が複数やってきて、車両全体を警備する。車内での優雅な体験と、リアルな生活感あふれる風景とのギャップは、現在の南アフリカの複雑な社会構造を象徴しているかのようだ。

南アフリカ政府は、雇用創出や経済効果を見込んで、観光産業を積極的に支援する姿勢を打ち出している。数年後、ブルートレインの車窓から見える風景は、今とは異なる表情を見せているかもしれない。
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