こうして、金利が経済の実情に合わせて上昇することとなった。その後、インフレ率の高まりを反映して長期金利は上昇している。こうした変化、とくに物価上昇に伴う金利の上昇は、実質金利の上昇というより名目金利の上昇と捉えるべき現象だ。
ところが、このような中長期的趨勢とは別に、長期金利も超長期金利も2025年になってかなり顕著に上昇している。
30年債や40年債の超長期金利は、5月以降に上昇基調を強め、低調な入札結果などを受けて、7月中旬には30年債利回りが3.1%台、40年債は3.6%台と、いずれも発行開始以来最高の水準を記録した(ただしその後は、財務省による超長期債の発行減額観測などから、利回りはやや低下した)。
これが、冒頭で区別した「第1の問題」だ。この問題は、名目金利の上昇というより、むしろ実質金利の上昇と捉えるべきものである。これについて、さらに深く考察していきたい。
トランプ関税に「債券自警団」が警告
アメリカのドナルド・トランプ大統領は、3月26日に自動車や自動車部品について25%の追加関税を課すと発表した。これによって景気後退の懸念が高まり、リスク資産である株式から安全資産である国債への資金移動が全世界的に生じた。その結果、株式の価格が下落し、国債の価格が上昇(利回りは下落)した。

日本の10年国債の利回りも、それまでの1.5%程度から4月4日には1.2%程度まで下落。これに伴い、日銀の利上げ観測も大きく後退した。
そして、4月2日に相互関税が発表されると、その内容が予想以上に厳しいものであったため、金融市場が動揺。国債からさらに安全な資産への資金移動が生じ、金利が暴騰した。
さすがのトランプ政権もこれには対応せざるをえなくなり、4月9日に発動したばかりの上乗せ関税率の一時停止などの措置を取った。結果、関税政策に関する過度な不安が後退し、日本の10年債利回りも落ち着いた。
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