「虫なんて大っ嫌いなのに…」美術学校卒女性がアース製薬で27年間《100種以上の害虫》を育てることになって知った、苦手な仕事との向き合い方

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まず強烈な臭いに気が滅入った。1カ月に一度、床替えといって成育環境をきれいにするために新しいケースに移す作業時、紙製シェルターを持ってゴキブリを振り落とす。口で息をすることで臭いをなんとかしのいだが、それでも腕を這い上がってくることが多く、そのたびに背筋がぞわぞわとした。

ゴキブリ飼育も「楽しくなるように」工夫し乗り越える

さらに、当時は餌容器がビンだったため、床替えのたびに洗浄する必要があった。30個近い容器を熱湯で洗うのは、相当な手間がかかった。効率よく済ませたいと思った有吉さんは、使い捨てできるプラスチック容器に変えることを提案。臭いに触れる時間が少なくなり、作業時間は2時間短縮した。

また、単調な作業を少しでも楽しくする工夫も忘れなかった。たとえばオス・メス各200匹という依頼があれば、左手でカウンターを持ちながら、100匹を10分でカップに分けるといったゲーム感覚で挑んだ。1〜1.5cmほどのチャバネゴキブリは、横から胴体をピンセットで素早くつかみ、脚がちぎれないよう注意を払う。

「もともと、ちゃちゃっと済ませたい性分で。手先の器用さが役に立ちました。嫌なことは、できるだけ楽に、楽しくなるように工夫してきました。関西人らしい気質なのかもしれません(笑)」

生物飼育の仕事は、製品開発のための薬剤試験で必要な害虫を、必要なときに、必要なだけそろえておくこと。そのミッションを遂行するために、嫌悪感すら創意工夫で乗り越えた。

しかし2年経っても、虫が嫌いな気持ちは変わらなかった。転職も考え、こっそり採用試験を受けたこともあった。しかし、その背中を止めたのは、信頼していた先輩社員の言葉だった。

次ページ支えてくれた先輩の言葉と、新たな課題「ナメクジ飼育」
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