見る、語る、実行するの3ステップを心掛けよ--『言葉力が人を動かす』を書いた坂根正弘氏(コマツ会長)に聞く
コマツのV字回復を成し遂げた経営者の一味違った「実践経営論」が話題だ。「見る」「語る」「実行する」のステップを心掛ければ、おのずと養われる「言葉力」によって人を動かすことができるという。
──「ダントツ経営」で著名です。
この5年ぐらい講演をしまくっている。このところは週2、3回のペース。一般論はほとんどない。自分の経験したことや、一点突破の例を、コマツならではのデータを挙げながら話す。引き込まれるとの感想をいただいている。それはなぜなのか。自分としても、その言葉力を解き明かすのは興味のあるところなので、考えてみた。
──言葉力?
この本を書いてからは、それで講演会の最後を締めている。「見る」「語る」「実行する」というステップを、サイクルとしていかに多く回すか。それによってリーダーは言葉に力を持たせることができる。まず見るが大事で、そこで本質を見抜けるかどうか。見抜けずに語ると、実行しても失敗する。このサイクルを意識して回していけば、語る力は自然と出てくる。語る前に見る、語った後に実行する。これを含めて言葉力だと思っている。
好きな言葉に「知行合一」と「誠」がある。知識は行動と合わさって初めて一つであり、実践の場で繰り返して学んだことこそ本物だ。それは、このサイクルでいえば、見ると実行するを合わせたもの。また、誠は、言うを成すと書く。語って実行するから、誠意になるし、信頼を得ることができる。この三つのステップに、知行合一も誠意も重なる。