見る、語る、実行するの3ステップを心掛けよ--『言葉力が人を動かす』を書いた坂根正弘氏(コマツ会長)に聞く
──2001年の社長就任後、固定費こそ病根と手術に乗り出しました。
コマツが赤字に落ち込んだのは、モノづくりに競争力がなくなったからではない。雇用が大事だと、ひたすらいろいろな事業に手を出し、子会社もたくさん作って、結局固定費で押し潰された。それさえ取り除けば競争力はあるという一点突破のデータ分析を、競合相手のキャタピラー社との比較でやってみせた。実際に固定費を軽くした分だけ、最終利益が上がってきた。
──その後はダントツ商品の開発に歩を進める……。
GPS(全地球測位システム)を活用したコムトラックス(自動遠隔管理システム)も、1998年ごろ、専務経営企画室長のときに発想した。今や世界50万台の半分、25万台の稼働状況が東京にいながらたちどころにわかる。当時、建設機械を盗んでATM(現金自動出入機)を壊す事件が頻発した。レンタルビジネスの効率化でも要望が出ていた。GPSを搭載して機械にセンサーを付ければ、「市場の見える化」「経営の見える化」も促進できるはずだった。
最初はオプションにした。通常より、当時の利益率で2%ほど代金を多くもらわないと、利益維持はできない。いろいろなメリットを申し上げても全然普及しない。01年に社長になって、自社のためと割り切り、逆に自身で価値を生み出せば2%分の費用は回収できるはずとして標準にした。これも部分最適論では踏み切るのは無理だ。
──建設・鉱山機械の需要動向は世界経済の展望に対する格好の尺度になるようですね。
これからの30年を見通すために、過去30年の動向を振り返ってみた。建設・鉱山機械の需要が日本、北米、欧州、中国、それに残り150カ国で、地域別にどう推移したか。特に循環するバブルに注目している。