「暑すぎる…よし、首元をキンキンにしよう」 《ネッククーラー》で冷却ガジェット市場を開拓したアキバ中小企業、猛暑対策グッズが爆売れの訳
「最新モデルは女性利用者を意識しながら、軽量化を重視して開発しました。ただし過去のモデルの中には、最新のものよりも重い代わりに、冷たさが数度低いモノもあり……。重さを気にしない方などは、過去のネッククーラーを選ばれる方もいます」
つまり同社の商品開発は、全体の機能性を底上げすることもあれば、トレードオフの関係で「強みに特化」することもある。少数精鋭企業の同社は(従業員数約60名・年商27億円)、限られたリソースをどこに配分するべきかの判断、市場の需要をかぎわける嗅覚が鋭いのだろう。

筆者はウーバー配達員ライターとして日々活動しているが、猛暑の屋外で活動するために軽量化が欠かせない。その一方で、何万円もする高価な製品を買うのは気が引ける。このような需要に応えてくれるのが同社の商品開発力であり、商品開発量なのだ。
なんと同社では、年間100個以上の新商品を市場に送り出している。つまり単純計算で週に約2個、新商品を販売している。
「弊社では毎週1回、全従業員が社内のWeb掲示板に、自由にアイディアを出し合ってます。アイディアは1行でもいいし、何個出してもいい。既存の商品のブラッシュアップでもいいし、新商品でも大丈夫。お客様の声を拾い上げたり、日々の生活の中での気付きや、思い付きを大切にしてます。ここだけの話、たくさんアイディアが浮かぶときもあれば、『来週提出するアイディアはどうしよう……』と悩むこともありますね(笑)」
在庫の山、機会損失…。季節モノ商品を扱う難しさ
「面白くて」「役に立つ」家電商品を廉価かつハイペースで提供する、サンコー株式会社。創業社長である山光博康氏の名字である「ヤマミツ」を「サンコー」に読み替え、さらに英語の「Thank you」に掛けて「THANKO」と表記するなど、1にも2にも経営姿勢がユーモアな同社だが……。
全従業員で「クリエイティブの種」をまき、みんなで意見を出し合う「水やり」をして育てていく。この姿勢があるからこそ、初代ネッククーラーが開発され、現在に至るのだと四宮氏は教えてくれた。
「弊社のネッククーラーは、社長が考えごとをする際、頭が熱くなる感じがする→冷ます商品がほしいというアイディアから始まりました。2015年は2000個作り、すべて完売。ここで手応えをつかみ、第2世代では冷却と加温、2つの機能を持った商品を5000個作り、こちらも完売。ただしお客様の声から加温の需要がそこまで高くないと判明し、以降は冷却機能に特化していきました」
第3世代も順調に売り上げを伸ばし、第4世代も年間24万個を売り切った同社だが、第5世代の販売時に「冷汗が止まらないピンチ」に見舞われたと言う。
「第5世代は発売年に50万個近く売れたのですが、実はそれ以上に在庫を用意しておりまして……。お客様に翌年、翌々年も購入していただき、今年になってようやく売り切ることができました(汗)」
在庫の問題を解決するため、初期在庫を減らして不足分を増産で対応できないのか。四宮氏に聞いたところ、「増産には数カ月を要するので、季節モノの商品では難しい部分があります」と回答があった。ネッククーラーは6~7月が販売のピークで、夏以外の季節はほとんど動かないそうだ。ただし近年は暑い期間が長期化していることもあり、8~9月頃までは一定の需要が見込まれると言う。
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