最近すっかり聞かなくなった《メタバース》に今さら参入した三菱UFJ銀行、「あっ!なるほど」と思わず声が漏れた"狙い"の深層

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匿名で資産運用を含む金融商品の相談ができるサービスについては、従来「あまりなかった」(同)という。メタバースなら、URLをクリックするだけで気軽にアクセスでき、アバターによる親しみやすい環境で相談できる点が新しい。

ターゲットは現役世代だ。平日日中に来店できるのは「比較的高齢の層が多い」(同)という。その中で三菱UFJ銀行は「若い方や、これから資産を蓄えていく層との接点を持ちたい」と考えている。仕事の合間でも気軽に利用できるメタバースは、この層へのアプローチに適している。

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アバター行員との相談予約カレンダー。7月下旬から8月にかけて多くの枠で予約が入っており、サービス開始直後から一定の利用があることがうかがえる(7月15日現在、画像:筆者撮影)

実際、サービス開始から約1週間で、利用は「想定した範囲内で立ち上がっている」(同)状況だ。まだ本格的な評価段階ではないが、確かな手応えを感じているという。

メタバース戦略の成否を分けるカギ

三菱UFJ銀行のメタバース参入は、メガバンクが新たな客層獲得に向けて積極的に動いている象徴的な事例だ。

同行は昨年、商業施設での期間限定出店も実施している。「こうやって出てきてくれると、こんなこと聞いていいのかなということも気軽に聞けてよかった」という顧客の声を得た経験が、メタバースへの取り組みにもつながっている。新NISA(少額投資非課税制度)や金利上昇で金融相談への関心は高まっているが、まだまだアクションに移せない人が多くいるのが現状だ。

メタバースの成功は、リアル店舗との連携に懸かっている。木田氏は「メタバースと実際のリアル店舗をうまく連携させながら、相互に送客できる世界が作れれば成功だ」と語る。9月の高輪店の開業に向けて、メタバース上でのイベント参加者が実店舗で特典を得られる仕組みなどを検討中だ。

ただし課題もある。「われわれ自身が作った空間なので、人を呼んでこなければならない」(同)。著名人を招いたイベントなど、継続的な集客施策が必要になる。

金融業界全体が顧客接点の多様化を模索する中、三菱UFJ銀行の挑戦は先行事例として注目される。メタバースという技術を使って「ハードルの高い銀行」という従来のイメージを変え、デジタルネイティブ世代との接点を築けるか。その成否は、バーチャルとリアルの効果的な連携が左右しそうだ。

斎藤 健二 金融・Fintechジャーナリスト

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さいとう けんじ / Kenji Saitoh

2000年よりWebメディア運営に従事し、アイティメディア社で複数媒体を創刊、編集長を務める。その後メディア事業担当の役員としてビジネスメディアやねとらぼなどの創刊に携わった。2023年に独立。Xアカウントは@3itokenji

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