最近すっかり聞かなくなった《メタバース》に今さら参入した三菱UFJ銀行、「あっ!なるほど」と思わず声が漏れた"狙い"の深層

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そもそもメタバースの現在地はどこにあるのか。博報堂DYホールディングスが3月に発表した「メタバース生活者定点調査2024」によると、日本でメタバース関連サービスを認知している人は38.4%で、前年度から2.1ポイント減少した。推計約3294万人が認知しているものの、認知度の拡大は明らかに頭打ちとなっている。

しかし、実際にメタバース関連サービスを利用したことがある人は8.7%(推計約687万人)で、前年度から0.3ポイント増加した。約687万人という数は決して少なくない。認知度は下がったものの、利用層は着実に裾野を広げている。

より重要なのは、メタバースに対するイメージの変化だ。「親しみの持てる」とする回答は10.8%で前年度比3.4ポイント増、「手軽な・簡単な」は9.7%で同2.4ポイント増となった。一方で「オタクが多い」は7.4%(同4.0ポイント減)、「先進的な・最先端」は12.4%(同3.7ポイント減)と減少している。

銀行が保有するアート作品を展示する役員会議室風の空間。現実の店舗では困難なこうした贅沢な空間も、メタバースなら建築コストをかけずに実現できる(画像:筆者撮影)

同調査では「メタバースがバズワードとなってから2年以上が経過し、日常で見聞きする機会も積み重なることでメタバースへの先入観や偏見が薄れ、親しみが持たれ始めている」と分析している。

つまり、メタバースは「特別な技術」から「身近な技術」へと変わりつつある。三菱UFJ銀行が参入したのは、まさにこのタイミングだった。技術が成熟し、一般的な顧客にとって使いやすくなったからこそ、金融サービスに活用する意味が生まれたわけだ。

「コスト削減」から「関係性重視」へ舵

三菱UFJ銀行のメタバース参入を理解するには、同行の店舗戦略の大転換を知る必要がある。

これまで同行は、全国の店舗網の約4割にあたる200店舗弱を削減してきた。金利がゼロやマイナスだった時代、銀行は収益確保のため、コスト削減と効率性を重視した組織運営を迫られていた。

三菱UFJ銀行カスタマーサービス推進部の木田圭亮リアルチャネルグループ次長(特命)は「一定程度コストを落とし、筋肉質になっていく必要があった」と当時を振り返る。

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