大手が率先「賞与の給与化」は年収の安定化にあらず? 企業の真の狙いに“従業員格差”は拡大へ
これだけでは何のことかわかりにくいでしょうから、日本における賞与の歴史を簡単に振り返りましょう。
明治9年(1876年)に郵便汽船三菱会社(現在の日本郵船)が社員の功績を称えて賞与を支給したのが、日本で最初の賞与とされます。ただ、戦前はそもそも日雇い労働者が主体で、月給取り(サラリーマン)が少なく、何カ月も働いた後に賞与を受け取るのは大手企業の幹部社員に限られました。
賞与は月給では買えない大型支出をまかなうため
その賞与が一般社員や中小企業にも広がったのは、長期雇用が実現した戦後のことです。戦後10%を超える高インフレのため、春先に決めた月給が半年経ったら実質的に目減りするという事態が発生しました。会社は組合からの要望を受け、組合員の実質賃金を下げないように、月給の目減り分を賞与で補ったのです。
つまり、戦前の賞与は社員の功績を称える「成果給」でしたが、戦後は組合員の生活水準を維持する「生活給」に変貌しました。「生活給」とは、「月給は毎日の生活をまかなうためのもの。賞与は月給では買えない大型支出をまかなうためのもの」という組合独特の考え方です。
「生活給」という言葉は、近年あまり使われなくなりました。ただ、賞与が「基本給2カ月分」などと決められるように、「組合員の生活水準を維持するために、できるだけ賞与を安定的に支給する」という生活給のロジックは、今も連綿と続いています。
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