"濡れ手で粟"のビジネスに味を占めたアメリカでは、いくら高関税をかけても製造業は復活できない

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産業のコメと言われる半導体は日本に圧力をかけて(2次に亘った日米半導体協定)、市場から排撃した。ところが保護されるべきインテルも開発競争で台湾のTSMCに敵わなくなった。

アメリカ政府は巨額の補助金をつけて台湾、韓国の企業誘致、あべこべである。中国の脅威には技術ではなく高関税で対応した。トランプの高関税はかえってアメリカのGDPを1%ほど押し下げる。

トランプにとって重要なのは目に見えるかたちで自国産業を守ることである。

90年代からアメリカ経済を牽引したマイクロソフト、アップル、グーグルなどビッグテックは突然、中国のディープシークの登場と市場混乱によって凋落が始まったように見える。快進撃を阻害するのは伝家の宝刀、独禁法だ。

そしてこれらシリコンバレーのIT企業がトランプ政権のすすめる暗号通貨推進に相乗りした。これこそ最重要なポイントである。

なぜ「ものづくり」より関税にこだわるのか?

トランプには「ものづくり」で劣勢のアメリカ産業の立て直しを基本的に考え直すという基本的ヴィジョンが希薄である。AIに投資し、半導体で中国を封じ込めるというバイデン政策の枠を越えていない。

自国の産業をまもるために関税を武器とする。『関税、関税、関税』である。そして『投資、投資、投資』だ。

メキシコとカナダへ25%の高関税をかけると脅し、BRICSには米ドル体制から離れるなら100%関税を課すとブラフをかける。

じっさいに中国には145%の追加関税をかけ、息の根を止めようとする。頭の中にあるのは不動産取引の延長のごとし。

問題はなぜトランプが関税にこだわるのか、である。

曾てアメリカの産業力を象徴したボーイングの技術劣化、GM、フォードの不振、クライスラーの再編がなぜ起こったか、なぜUSスチールが日本製鉄と経営した方が、アメリカ経済にとってプラスになるのかを考えるに至ったのだ。

アメリカの製造業は安い中国品を輸入するばかりで、なぜ自ら製造しようとはしなかったのか。

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