「日傘は借りる時代へ!」≪日傘シェア≫が山手線駅含む東京都内でスタート、“24時間140円”の勝算は?
TRIPではアイカサ以外にも、ヘアアイロンのシェアリングサービス「ReCute(リキュート)」、子どもの一時保育マッチングサービス「あすいく」、イギリス発の鉄道事業者向けソリューションを提供する「Transreport」なども支援している。
「ReCuteは東急のアクセラレーターで採択された後、TRIPを通じて現在6社の鉄道会社の商業施設に展開している」と水船氏は説明した。
ビジネス機会1.8倍、雨の日プラットフォーム展開も視野
「東京都の年間雨天日数は110日、真夏日は84日ある。日傘サービスで商売の機会が1.8倍になる」。アイカサ運営の丸川照司代表は、発表会後の個別取材でそう語った。
「使い捨て傘ゼロ」を理念に掲げるアイカサは、2018年に渋谷の飲食店約300カ所でサービスを開始。年間10万本も買われては捨てられる傘の無駄をなくし、雨の日も快適に移動できる社会を目指してきた。
サービス拡大の転機となったのが、JR上野駅への設置だ。JR東日本スタートアップの支援のもと、JR東日本の鉄道駅としてアイカサの貸し出しスポットを初めて設置。駅での展開を広げていく端緒となった。JR東日本スタートアップの柴田裕代表取締役社長は「2019年から『駅から使い捨て傘をなくしたい』という丸川代表の熱い思いに共感してきた」と振り返る。

コロナ禍では苦境に立たされたが、じわじわと規模を拡大してきた。現在は1800カ所に設置、会員数75万人まで拡大している。東京メトロは6月12日に同社が管理する全171駅へのアイカサ展開を発表している。
小坂彰洋代表取締役社長は「脱炭素・資源循環型社会の実現を目指す企業として、アイカサの理念に共感した」と述べた。都営地下鉄の堀越弥栄子交通局長も新宿線全駅を含む27駅での展開を報告した。
サービスの将来像について、丸川代表は「将来的には、天候に応じて美術館の割引やカフェのクーポンを配信したい。雨の日のプラットフォームを作りたい」と語る。アプリ会員が将来1000万人を超えれば、天候連動型のマーケティングプラットフォームとしての可能性も見えてくる。

2030年までには首都圏でコンビニ数相当の1.5万カ所への展開を目指すという。「1日10万人が使うような状態を作りたい」と丸川代表は語る。
気候変動による猛暑は今後も続く見込みだ。過去50年で猛暑日は4倍に増加し、熱中症による死亡者数は年間1000人近くに達している。「気候変動の緩和だけでなく、適応も同じくらい重要」と丸川代表は強調した。
山手線全駅を含む150カ所から始まった日傘シェアリング。雨傘で75万人の会員を獲得したアイカサが、晴れの日も含めて1.8倍のビジネスチャンスを狙う。鉄道事業者13社局とスタートアップの連携が、猛暑対策にどこまで貢献できるか。その成果が注目される。
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