「昔は一発屋みたいな」「今は3割バッターくらい」 ヒット企画連発のオリックス・バファローズの広報宣伝部。どんな秘訣があるのか話を聞いた

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2013年をもって終了していた『じゃがいもデー』だが、とあるテレビ番組での発言がきっかけとなり、2022年に9年ぶりの復活を果たした。

「なにわ男子の藤原丈一郎さんはオリックスファンとして知られていますが、藤原さんがテレビ番組(フジテレビ系の『ワイドナショー』ほか)に出演された時、じゃがいもデーがきっかけでオリックスファンになったと明かしていました。それでじゃがいもデーというワードがSNSでトレンドになり、話題になっているのであれば……ということで復活させることにしたんです。

藤原さんにはオリックスの試合で何度も始球式を務めていただいていますし、オリックスとのつながりが強い方というのもありますし、リスペクトの意味も込めての再開ですね。それと、うちの営業が頑張ってくれたこともあって、“じゃがいもつながり”でカルビーさんがスポンサーに付いてくださったり……望外の喜びでした」(花木氏)

オリックス・バファローズ
紅林弘太郎選手と宮城大弥投手。じゃがいも、じゃがいもハットとパシャリ/©ORIX Buffaloes
オリックス・バファローズ
こちらは中川圭太選手と大里昂生選手。毎年、多くのファンがじゃがいもデーを楽しみにしている/©ORIX Buffaloes

かつて蒔いた種が、時間を置いてじゃがいもの花を咲かせた……ということか。偶然の幸運があったにせよ、柔軟に企画を再開できるスピード感は見習いたいものだ。

エラーは恐れずに何度でもトライ

企業の広報戦略は緻密な計画に沿って進められることが多いが、一方で失敗を前提に数を打ち、ファンの反応を見ながら試行錯誤を重ねていくパターンも多い。オリックスは後者だという。

「挑戦を楽しめる楽天的な人間が集まっていて、エラーはあまり恐れずに何度でもトライする社風です。場数を踏むと、中には当たるものもある。当然しっかりと戦略的に取り組んでいることもありますが、基本的に“まずはやってみよう“というスタンスを重視していますし、強みはそこだと思います。

昔は一発屋みたいな感じでやっていた時期もあったのですが、成功体験、失敗体験を重ねて経験値が増えてきて、最近は打率も上がってきています。3割バッターくらいにはなっているんじゃないですか(笑)」(花木氏)

広報宣伝部ならではの視点で執筆されている『蔵出しノート』も、人気コンテンツの1つ。選手に限らず球団にまつわることを深掘りして伝えていくことで、SNSやYouTubeチャンネルとは役割を棲み分けているという。

オリファンから支持を集める蔵出しノート。スタッフの目を通して、舞台裏を詳しく知ることができる/©ORIX Buffaloes

「今あるコンテンツに不足している部分を補いたかったんです。オリックス・バファローズ公式YouTubeチャンネル『BsTV』や公式エンタメ有料サイト『BPB DX(バファローズプレミアムボックス デラックス)』といった人気のコンテンツはあるのですが、動画の魅力って選手のありのままの姿を発信することが醍醐味だと思うんです。

一方で、蔵出しノートの個人的なテーマというのが「深掘り」です。一般メディアの目がとどかない部分にスポットを当て、ファンの方へとどけるのは大事なことだと思いますし、球団にまつわることをしっかり深掘りしてストーリー化していくのであれば、動画ではなくテキストでお伝えするのが最適だと思っています。

「スポーツナビ」さんにそのままの内容で掲載していただいたりもしていますし、球団コンテンツの枠組みから少し飛び出し、幅広いスポーツファンの方々にお楽しみいただければと考えています」(西田氏)

通訳や用具担当など、球団の裏方にスポットを当てた記事は球団の広報宣伝部ならではの切り口だ。YouTubeチャンネルやSNSでライトなファンにアプローチする一方、蔵出しノートのような深掘りした記事でコアなファンもカバーできる。

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