「起業の夢絶たれ…」ブラック企業を転々し不本意派遣も。貧困の沼から這い上がれない大学院出身53歳男性のリアル
しかし、同時に「長期で働いてほしい」とも言われる。実際に複数の派遣先で半年から1年程度働いたが、いずれも最初の2カ月は保険に入れなかった。
タカシさんは、「派遣会社が社会保険料の負担を免れようとしていたんでしょう。拒めば契約をしてもらえないので、文句もいえなかった。リクルートとか、テンプスタッフとか、あのころはどこでも同じことが行われていました」と指摘。なかには1年間にわたって未加入という悪質なケースもあったという。

社会保険未加入期間は3年以上
派遣先が変わるたびに社会保険の“空白”を強いられた結果、未加入期間は派遣時代だけで計3年以上にのぼった。
物流大手アマゾンが管理する倉庫で派遣労働者として働いていたときは、定時よりも10~15分早く出勤するよう命じられた。その間は無給である。腹に据えかね派遣先会社に電話で通報。対応した担当者からは執拗に「会って話を聞きたい」と言われたが、匿名を貫いたという。告発後すぐに定時前の出勤はなくなった。
「(ほかの派遣労働者は)法律の知識がないので黙って従っているか、『クビになるのが怖い』と声を上げようとしないかのどちらかでした。ほぼ最低賃金なのにクビになるのが怖いなんて、まるで奴隷のようですよね。(職場は)同じ年代の人が多かったです」
この間、タカシさんは就職に役立てようと大型二輪の免許を取得。そのかいあってバス会社のドライバーに正社員として採用されたこともある。しかし、自宅通勤という約束だったはずが、実際の配属先は通勤に片道2時間半以上かかる地域。挙句の果てに「寮に入るように」と指示され、結局、入社しなかった。
誤解を恐れずに言うと、と前置きしたうえでタカシさんはこう語る。「このとき採用されたドライバー10人のうち6人が大卒でした。それだけ仕事がなかったんだと思います」。
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