「起業の夢絶たれ…」ブラック企業を転々し不本意派遣も。貧困の沼から這い上がれない大学院出身53歳男性のリアル

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求人詐欺に不当解雇、過重なノルマ、社会保険をめぐる脱法的な手口――。タカシさんが「犯罪的な職場ばかり」というのも無理もない。ただ怒りの矛先は企業よりも行政に向かう。

「(一部の企業で)法律が守られていないことを、行政は知っていたはずです。私自身、ハローワークや労基署に直接訴えました。それなのになぜ取り締まろうとしないのか」

タカシさんが糾弾する行政の現場では、2010年代後半から一部の自治体や官庁が就職氷河期世代に限定した中途採用を始めた。しかし、このときすでに40代後半。倍率も高く、何度か採用試験に挑んだものの、「受かる気がしませんでした」。

タカシさんは「国はもっと早くワークシェアリングするべきでしたし、採用人数も増やすべきでした。やらないよりはましかもしれませんが……」とため息をつく。

厚生労働省の支援「遅すぎます」とタカシさんは言う(厚生労働省HPより)

スニーカーの通販で生計を

冒頭で触れた、高齢者向けのデイサービス施設から即日解雇の通知を受けたのは、数年前。以来、会社で働いていない。母親の介護が必要になったからだ。今はスニーカーのネット通販で糊口をしのいでいる。

住まいは親戚が所有するマンションで、家賃がかからないのでなんとか生活できてきたという。結婚歴はない。不安定な雇用環境の中、「結婚できるとは思えませんでした」。

タカシさんは自身の半生を次のように振り返る。

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