"アホボン"では生き残れない!日本のファミリービジネスの変容が招く「お坊ちゃん大学」の岐路

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近年、お坊ちゃん、お嬢様は、幼稚園、小学校から大学まで、豊かな家庭の子息が集まる学校に通い、同じ境遇の人々とだけ付き合うのがつね。そのような環境で育ったお坊ちゃん、お嬢様の中にはとても人柄がいい人もいるが、なかには少しでも自分よりも下の階層と見ると見下す輩も実在する。

しかし、恵まれた環境で育った人こそ、自分よりも下の階層の人々を温かい目で見守る「利他の精神」を忘れてはならない。この教えは、仏教の慈悲、キリスト教の隣人愛、イスラム教のザカート、ヒンドゥー教のカルマ、ユダヤ教のツェダカーなど、主要な宗教に共通する考え方でもある。それが現実社会で実践されていないのは、人間の根深い性(さが)であり、克服すべき課題でもある。

窮地に立つ「お坊ちゃん大学」

「ええしの子」の親たちは、ますます複雑化し厳しさを増す経営環境において、おおらかな「育ちの良さ」だけでは会社を持続的成長させられないと考え始めた。そのため、「ええしの子」を進学校から日本の名門大学、さらには海外のMBA(経営大学院)に進ませるべきだと考えるようになったのだ。

体育会部活動で体を鍛え、チームワーク、達成感などを学ばせるよりも進学塾へという考え方に変化しており、最終学歴をより偏差値の高い大学、名門と呼ばれる大学、その中でも経済界人脈をつくるうえで有利な大学を選択する傾向が見られる。

阪神間の経営者の間では、西日本で唯一の旧制7年生高校としての伝統を受け継ぐ甲南大学は、経営者人脈をつくるうえでは適した大学と見られていた。甲南大OBである西河紀男氏(元・三ツ星ベルト会長)は次のように回顧している。

「灘中・灘高から何人かの同級生と一緒に甲南大学に進んだ。旧制の甲南高校は、帝国大学に進学する人が多い名門校で、その名残があった」(甲南大学ウェブサイトより)

甲南幼稚園から甲南大(学校法人は異なる)まで進学する学生には経営者の子弟が多く、灘五郷名物の酒粕漬けになぞらえ、「甲南漬け」と呼ばれている。しかし、「お坊ちゃん大学」と見られていた甲南大も、「普通の大学」になりつつある。学生数が増え、「甲南漬け」のような内部進学者は相対的に少数派になってきた。

現状は武田氏や西河氏が過ごした時代とは異なるものの、兵庫県内では最も多く社長を輩出している大学(「2024年 全国社長の出身大学調査」東京商工リサーチ)であることに変わりはない。そのせいか、いまだに「お坊ちゃん大学」と見ている地域住民は少なくない。

1964年に設立された芦屋大学は、経営者の子女を集め、「ポスト甲南」を狙おうとしていたフシがある。卒業生の顔ぶれを見れば、その一端がうかがえる。

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