JR東海リニア「静岡以外」で工事遅れる本当の理由 2027年以降の完成は84工区中31工区に及ぶ

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リニア反対派は以前から「2027年まで完成しない工区は静岡以外にもある」と主張しており、「2027年開業をうたった見通しの甘さを指摘する声も出ている」と批判する報道も見られる。

確かに当初の見通しが甘かったものがあるかもしれない。だが、そもそも現在の状況では2027年までに完成させる必要はない。もし2027年までに完成したとしても、それらは静岡工区が完成するまでは使われない。そのまま放置しておくとコンクリートや機器類が劣化する可能性があるため、定期的にメンテナンスする必要があり、手間も費用もかかる。

だとしたら、静岡工区の遅れの範囲内で工期を先延ばしできるならそれに越したことはない。また、全国的な作業員不足という状況を考えれば、工期を延ばすことで労働力を分散化できるメリットもある。

JR東海の宇野護副会長は以前、副社長中央新幹線推進本部担当としてリニアを指揮していた頃、次のように話していた。

「静岡以外でもスケジュールがタイトな工区があるのは事実。人手不足、資材高騰など工事をめぐる環境が厳しい中、お金をかければ2027年に間に合う可能性がある工区もあるが、いま無理をして2027年に間に合わせるのは合理的ではない」

経営判断としては自然だ。2027年にこだわる必要がなくなったことで、沿線各地で地元との協議を丁寧に実施する時間もできたし、地質などを踏まえて、より慎重に工事を進めるようになったという側面もある。

開業の遅れを新たなチャンスに

どの沿線自治体もリニア開業を地域活性化の起爆剤にしたいと期待しているだけに、開業時期の遅れには頭を抱えているに違いない。しかし、嘆いてばかりいても仕方がない。工期が延びる分、工事期間中におけるJR東海と自治体、地元住民のコミュニケーションが深まって新しいアイデアが生まれる余地が生まれると信じたい。

リニア実験線
山梨のリニア実験線(撮影:尾形文繁)

山梨県は現在構想中の富士山を走る「富士トラム」をリニア開業時に山梨県駅まで延伸する未来を描く。リニアで山梨県駅に降り立った客を車両に乗せて一気に富士山五号目まで連れていくという夢のような案だ。2027年には到底間に合わないが、新たに示される開業時期次第では実現するかもしれない。

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大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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