JR東海リニア「静岡以外」で工事遅れる本当の理由 2027年以降の完成は84工区中31工区に及ぶ
トンネル着工に際しては、生物多様性と発生土の問題も解決する必要がある。県は2019年1月に専門部会を設置してJR東海と議論を始め、同年9月には「引き続き対話を要する事項」として47項目を列挙した文書をJR東海に送付。これらすべてが合意されない限り県はトンネル工事を認めないとした。
国も調停役として有識者会議を立ち上げ、2020年4月から47項目について議論を始めた。水資源については2021年12月、環境保全と発生土については2023年12月に有識者会議が報告書をまとめた。これをもって国は47項目に関する議論は終了したと考えた。
だが、県の考えは違っていた。合意が得られたのは17項目にとどまり、残る30項目については引き続き協議が必要だとした。県はその30項目を28項目に整理して、専門部会でJR東海と対話を続けてきた。
知事交代後に議論加速
水資源問題については、工事で発生した湧水の県外流出分と同量を東京電力リニューアブルパワーが管理する田代ダム(静岡市)の取水を抑制することで、大井川の水量を確保するという取り組みをJR東海が川勝前知事の時代から提案していた。大井川の流域市町の首長たちは水問題を抜本的に解決する案であるとして高く評価していたが、県は認めようとしなかった。

しかし、昨年5月、川勝前知事の後を継いで鈴木康友知事が県のトップに就くと、議論はスムーズに進み出した。最後まで懸案となっていた雨不足などによって川の水量が少なく、取水抑制できない状態の対応やモニタリング計画についての具体的な内容なども6月2日の専門部会で、雨の降らない期間が30日間続いた場合に県や専門部会に相談の上で対応を検討するといった詳細事項が決まり、水資源問題についての対話がすべて完了した。
就任から約1年で水資源問題の対話が完了したことについて所感を問われた鈴木知事は「水がいちばん大きな争点になってきた。その対話が終了したというのは1つ大きな節目を迎えたと思う」と記者会見の席上で述べた。
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