JR東海リニア「静岡以外」で工事遅れる本当の理由 2027年以降の完成は84工区中31工区に及ぶ
残る2分野については、生物多様性の対話完了は17項目中3項目のみにとどまる。また、発生土置き場の対話完了も5項目中1項目のみにすぎない。そのため、3分野すべての対話完了にはほど遠いという見方もできる。
しかし、南アルプスの生態系への影響を100%予測することは難しく、工事の状況とその影響に応じて対策を講じていくしかない。環境を盾に工事に反対する勢力を納得させるのはおそらく不可能だ。鈴木知事は昨年5月の就任会見で「どこかで政治的な決断も必要と思う」と話しており、対話が膠着した場合は、知事の判断で工事を認めることになるのだろう。
リニア開業はいつになる?
では、今後、静岡工区の工事はどのようなプロセスをたどるのだろうか。生物多様性について県は現地調査を踏まえて生物への影響を予測・評価することを考えているため、それから協議を行うことを考えると年内に対話が完了するのは難しそうだ。

2020年6月、JR東海は2027年開業に向けたぎりぎりのタイミングだとして、静岡工区のトンネル掘削に先立ちヤード整備工事を県に求めていたが、県はJR東海が説明責任を果たしていないとして認めなかった。
この例にならうと、3分野すべてで対話が完了するとJR東海が説明責任を果たしたことになり、すぐにヤード工事が始まるように見えるが、おそらくそうはならない。説明責任とはJR東海と県の2者間に限らない。流域市町の住民にもきちんと説明したうえで、ヤード工事に入るはずだ。ヤード工事は1年もかからないとされており、ほどなくトンネル掘削が始まるはずだ。
工事が始まると気になるのは工事の完了時期、そしてリニアの開業時期である。JR東海は静岡工区の工事着手から開業まで10年1カ月と想定している。そこにはヤード整備、トンネル掘削、ガイドウェイ設置工事、試運転期間などが含まれる。これを今後に当てはめると、たとえば、来年にヤード整備が始まれば開業は10年後の2036年という推定は成り立つ。
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