フィリピン「鉄道員育成施設」日本が支援する背景 地下鉄の基地に設置「日本式」で安全意識浸透
これらは日本の一般的な通勤型車両のシミュレーターで、単線、複線、地下区間とさまざまな路線環境を再現し、雨や沿線火災、車両故障の発生なども体験できる。ATSやATO、CBTCなど路線に応じた保安装置の設定も可能だ。ちなみに、マスターコントローラーは手前に引くと減速、奥に押すと力行の欧米式を採用しており、フィリピン向けにカスタマイズされているのがわかる。
マニラ首都圏のLRTをはじめとする都市鉄道は、運輸省直轄のLRT2号線を除き、路線ごとに運営・保守を行うオペレーターを外注している(2024年5月30日付記事『阪急が参画表明、日本と「マニラ都市鉄道」の40年』参照)。今後開業するNSCRや地下鉄なども同様に、オペレーターは外注する形となる見込みだ。

日本にとってもメリットは大きい
しかし、過去の例からして、受注するオペレーターによって輸送品質が左右されるほか、優秀な人材が賃金の高い路線に流れてしまうという状況もある。メンテナンスをしたくても、運輸省から予算がなかなか承認されないという問題もある。
PRIによって鉄道員の全体的なスキルの底上げが図られれば、オペレーターへの参入障壁も下がり、より優良な企業の参画が期待できるかもしれない。2024年11月末にはJR西日本と住友商事がPRIを視察に訪れており、今後開業するNSCRや地下鉄の運営・保守にも関心があると推察される。
オペレーター外注型の都市鉄道を展開するフィリピンにおいて、その下地となる鉄道人材が育成されていくことは、日本にとっても悪い話ではない。今後、運営・保守の面は日本が輸出すべき「コア」になっていく可能性もあり、注目に値する。

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