フィリピン「鉄道員育成施設」日本が支援する背景 地下鉄の基地に設置「日本式」で安全意識浸透
これだけの規模のプロジェクトが完成した暁には、当然ながらそれを動かす人材が必須だ。また、このほかにもMRT7号線、ミンダナオ島の鉄道開発、またPNR在来線の改良など、鉄道プロジェクトは目白押しだ。この先10年で、フィリピン国内に約1万5000人の鉄道人材育成需要が発生すると予想されている。
せっかく日本の支援で鉄道を整備しても、維持管理ができなければ意味がなく、鉄道人材の育成は大きな課題だ。このような背景からPRIプロジェクトはスタートしたと谷坂氏は語る。
また、フィリピン政府側が要望していた前ドゥテルテ政権期間内(2022年6月退任)の地下鉄開業は難しいことから、その代わりとして鉄道人材育成の研修施設を政権期間内に稼働させることを提案したという政治的要因もある。

モデルは東京メトロの研修センター
決定打となったのは、2017年8月のツガデ運輸大臣(当時)による、新木場の東京メトロ総合研修訓練センター訪問だった。フィリピンの鉄道員に規律を植えつけたいという大臣の強い希望もあり、同施設の視察を通して、これをフィリピンに再現することが決まったという。
PRIの規模は床面積にして東京メトロの総合研修訓練センターの6割ほどだが、機能は同様のものを備え、運転や駅営業のみならず、電気・信号・土木など、原寸大の教材を用い、鉄道オペレーションに必要なすべての技能を習得できる施設となる。事故展示室も設置予定である。完成すると、2カ月の訓練を年に4、5回実施し、1年間で1500人から2000人程度の鉄道員を育てられるキャパシティを持つ。
こうして、施設としてのPRIは「マニラ首都圏地下鉄事業」の一部として整備されることになり、2026年10月のソフトオープンを目指している。建設中の建物は駅ビルのごとく、地下鉄の車庫線から伸びる線路の上を覆う形で、1階部分が研修用のホームになる。ホームから伸びる階段、またその上の改札部分など、まるで実際の鉄道駅の建設現場を見ているような感覚だ。
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