フィリピン「鉄道員育成施設」日本が支援する背景 地下鉄の基地に設置「日本式」で安全意識浸透
既存鉄道員研修(対象者約5400人)の「リフレッシャートレーニング」は2019年10月にスタート。2025年6月までに3280人が技術認証を取得している。技術認証を受けると、合格証明書が授与されるのみならず、氏名や所属会社がSNS上でも発表されるというのがいかにもフィリピンらしい。
技術認証の有効期限は5年間で、更新するには「キャパシティディベロップメントトレーニング」を受講し、最新技術のアップデートや重要事項の再確認をする必要がある。これはこれまで393人が受講した。2021年6月には新人鉄道員向けの「ファンダメンタルトレーニング」が開講し、各鉄道事業者の新入社員や大学の鉄道工学科学生など393人が受講している。
ただ、ここでふと疑問がわく。施設としてのPRIはまだ建設中だからだ。研修はどこで行っているのか?
仮施設にも本格的シミュレーター
実は、まだ仮施設を使って実施しているんです、と谷坂氏は現状を語る。仮施設のほか、大学のラボラトリウムや鉄道事業者の現場、運輸省の会議室なども使っているという。
当初の予定ではすでに研修施設が完成し、MRT7号線や南北通勤鉄道(NSCR)の一部区間の開業も控え、新人研修も大々的に始まるはずだった。しかし、各線共に建設は遅れており、地下鉄も同様だ。そのため、鉄道事業者の新人採用もまだ大量には始まっておらず、現状のPRIは既存の職員への研修にフォーカスしている。
仮施設は地下鉄の車両基地用地内の一角にあり、もともと建っていた倉庫を土地収用後に転用したという。施設内には、車両先頭部やホームドアなども再現し、揺れや振動も体験できる実寸大運転シミュレーター1台のほか、別室に30台の卓上型シミュレーターが設置されている。いずれも三菱プレシジョン製で、これらは「フィリピン鉄道訓練センター設立・運営能力強化支援プロジェクト」とは別に、日本政府の無償資金援助で導入された。

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