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“正しさ”だけでは決められない──「よりよい決断」に必要な思考法とは?ノーベル賞学者が教える「価値観と思考」の授業の中身

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その是非はともかく、人は人間としての「自由」を動物には当てはめない。私たち人間のことに関する助言を与える科学者と、家畜に関すること、たとえば家畜にワクチンを接種させるべきかどうかを決める畜産農家とのあいだには、とてつもなく大きな違いがある。

それは、人は他者のことを自律する一個人として認識し、他者にも自分に対して同様の敬意を払うことを期待するからだ(高齢の身内や幼い子どもに代わって決断を下す人がひどく苦悩する理由のひとつとして、決める権利は他者ではなく当人にあるとの思いから、たとえ無理でも当人の意向を尋ねたいという気持ちが生じることが考えられる。一方、動物に対してはそういうふうに考えようとしない)。

他者の意思決定にかかわらざるをえないことも

ときには、自分で決断できない人の代わりではなく、決断の結果の影響を共通して受ける集団や地域の一員として、意思決定にかかわらざるをえないこともある。心臓発作で意識を失ったときのようなケースでは、民主的な意思決定の手段は採用したくないだろうが、その手段である投票は、集団や地域に属する人々に影響が及ぶ決断に全員をかかわらせることができるものだ。

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集団で意思決定を行うとなると、対立しうるさまざまな関心事や価値観をはじめ、信頼できる事実や専門家に関する多様な意見を考慮する必要性が出てくるだろう。

本書の後半では、集団で協力して情報を評価し、互いの価値観を比較検討してじっくりと吟味できるようになる方法をいくつか論じ、民主的な手段として広く知られる投票という行為の質の向上に努めたい。

また、特殊ではあるが、もっとも影響を受ける人に決定権がないケースもある。すでに紹介した当人に決断する能力がないケースもそのひとつだが、それに加えて、個々人に決断を委ねると個人の枠を超えた影響が生じるケースがあるのだ。

オートバイの運転時にヘルメットの着用が求められているのがまさにそれで、パンデミックのときは保健機関に休校にする権限が委ねられるというのもこのケースに当てはまる。だがほとんどの場合は、影響を受ける個人や集団に決定権があると思えばいい。

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