【合計342歳】79歳、83歳、89歳、91歳の四姉妹で守る《まるで実家のような》創業70年の喫茶店──“思いつき”で始めた店がみんなの居場所になるまで
ガラス扉のハンドルを引くと、小さな店内に「いらっしゃいませ〜」の声が響いた。
思いつきは、79歳、83歳、89歳、91歳(平均年齢85.5歳)の四姉妹が切り盛りする昭和遺産のような喫茶店だ。
皆からあきちゃんと呼ばれる店長の朗子さん(89歳)を中心に、満知子さん(91歳)、紀久恵さん(83歳)、晴江さん(79歳)が交代で手伝っている。取材日にお会いできたのは店長の朗子さんと紀久恵さんの二人。筆者は定期的に思いつきに“帰省”しているので、顔を覚えてもらっている。
「今日は晴れて良かったね」。紀久恵さんから中央のテーブル席に座るように促される。客が店を褒めるときに「自分の家のようにくつろげる」「おばあちゃんの家に来たみたい」とはよく言うが、喫茶思いつきはまさに家の居間そのもの。実家感が強すぎる喫茶店だ。
壁には似顔絵や写真が並び、地元企業のノベルティカレンダーや緑の鉢植えがそっと空間を彩っている。飾らない実家そのままの雰囲気に、訪れる客は皆ほっと安堵感を覚えるのだろう。

思いつきの看板メニューとおもてなし
「喫茶思いつき」のメニューは全部で16種類。店内には晴江さん手作りのイラスト入りメニューが貼られている。昔は顧客の要望に応じて食事メニューを提供していたこともあったが、現在の食事メニューはトーストの一品のみ。


唯一の食事メニューであるトースト(300円)を注文。半分にはお手製のりんごジャム、もう半分には砂糖をまぶしている。白砂糖を霜のようにまぶした姿から、いつしか霜降りトーストと呼ばれるように。もともとは霜降りトーストだけだったが、お客さんに出したりんごジャムトーストが好評で半分ずつ提供するようになった。
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