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ライフ #記憶に残る喫茶店を訪ねて

【合計342歳】79歳、83歳、89歳、91歳の四姉妹で守る《まるで実家のような》創業70年の喫茶店──“思いつき”で始めた店がみんなの居場所になるまで

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手軽に淹れたての味が楽しめるインスタントコーヒーの出現、経費削減などで徐々に出前はなくなったものの、KDマン(神戸ドック社員の通称)との結びつきは続いていた。通い詰めたKDマンが数十年ぶりに思いつきを訪ねてくることもある。取材日もかつてのKDマンが二十年ぶりに来店していた。 

「近隣で働いていた人が何十年かぶりに来て、『ここは何も変わっていない』と喜んでくださるの。皆さんが憶えてくれているのは嬉しいわね」(紀久恵さん)

「死ぬまで思いつきを続けたい…」と支え合う姉妹 

四姉妹と常連客。中央左から満知子さん、晴江さん、紀久恵さん、朗子さん(筆者撮影) 

7男7女の14人兄弟姉妹の谷岡家で、現在健在なのは四姉妹と男兄弟の勝弘さん(87歳)の5人だけ。 

母のなみ江さんが92歳で亡くなったあと、朗子さんの記憶や判断力に不安を感じる場面が増えてきた。 

「一番の働き者のあきちゃんが認知症になるなんて。信じられない思いでしたよ」。はつらつとした紀久恵さんが口ごもったのは、朗子さんの病状を聞いた瞬間だけだ。 

現在は紀久恵さんが付きっ切りで身の回りの世話をしている。 

「母は10年寝たきりだったんだけど、あきちゃんは一人で介護をしてくれていたの。私たちを養うために生涯独身で思いつきを守ってくれたんだから、今度は私たちが支えなきゃね。『仲のいい姉妹ですね』ってよく言われるんだけど、あきちゃんを思うと喧嘩なんてできないですよ」(紀久恵さん)

朗子さんはだんだん言葉を話せなくなってきたけど、人と会話するのが刺激になるから店を開けているという。 

「あきちゃんは以前『死ぬまで思いつきを続けたい』と言ってたんです。こうして毎日お店を開けていられるのは、来てくださる皆さんのおかげ。ありがたいことやなぁと思っています。母とあきちゃんが守ってきた思いつきを、一日でも長く続けていきたいですね」。優しい表情で紀久恵さんは言った。 

1986(昭和61)年、店の前で母・なみ江さんを囲む四姉妹(撮影:神戸船渠工業株式会社) 
編集部注:本記事に登場するメニューの価格はすべて取材時点のものです。昨今の円安、原材料高騰などの影響を受けて価格が改定されている可能性があります。 

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