ある意味ではJAも被害者なのでは…岸博幸が指摘する、「令和のコメ騒動」を招いた《ノウスイ真理教》のレベルの低さ
農水省のコメ政策の特徴は、大きく2点に集約できる。1つは、1970年代からずっと減反政策を行い、コメの供給量を減らしてきた。表面的には2018年に減反政策を廃止したが、実際には、食用米の飼料用米などへの転作に補助金を出すことで、いまも減反政策を続けている。
もう1つは、減反政策のもとでコメの需給を調整・管理してきた。そうすることで、コメの価格を維持して、農家の収入を守ろうという考えである。
そもそも、政府が需給を管理すること自体無理なのに、供給を減らしてきたのだから、需要急増などのショックが市場で起きたら価格が上昇するのは当たり前だ。それならそれで、すぐに備蓄米を放出すべきだったのに、昨年秋ごろからその必要性が言われていたのにもかかわらず、実際に放出を始めるまで半年も要した。
さらにコメの流通は、集荷業者→卸会社(複数段階)→小売・外食という複雑なルートを辿るが、その流通秩序を前提に、備蓄米を入札できるのは集荷業者のみで、落札したのと同量を1年後に政府が買い戻すことを条件とした。
これでは、JA(農協)など一部大手の集荷業者しか落札できず、また卸会社の迅速な行動も期待できないので、早急に末端の小売(スーパーなど)まで行き届くはずがない。だからこそ、備蓄米放出を始めた後もコメの価格は上がり続けた。完全な行政の失敗である。
そこで農水省は、霞が関の官僚が得意な「逐次対応」、つまり小出しの対応を始めた。買い戻し期間の5年への緩和、小売業者に直接備蓄米が届くように計画した集荷業者に対する入札優先枠の新設である。
要は、農水省は50年前から続く自分たちのコメ政策を変える気はなく、説得力の弱い説明をしつつ、その範疇での対応に終始したのである。やることなすことすべて説得力がなく、かなりレベルが低い対応だが、そのやり方は、まさに「ノウスイ真理教」と言えるだろう。
小泉進次郎農相に課される試練
ところが、コメ問題はあるきっかけで一気に動き出した。コメ価格の高止まりが国民、メディアから厳しく批判され、2025年夏に参院選を控えた官邸や自民党の危機感が高まるなか、江藤拓前農相が失言で辞任し、同年5月、小泉進次郎氏が後任となるやいなや、小泉農相が備蓄米の小売業者との随意契約を始めたのである。
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