レアアースの第一人者、中村繁夫が語る未来 急変するレアアース市場 中国への依存度は激減へ
密輸価格は正規価格より2割ほど安い。実勢から懸け離れた高値だった正規価格の急落は、密輸価格に引きずられた面もあるだろう。
こうしたことを考えると密輸は必要悪ともいえる。ただ、密輸では詐欺が横行しているのも事実。サンプルはちゃんとしていたものでも、後から送られてくるものは粗悪であったりする。リスクは非常に高く、安易に飛びつくと痛い目に遭う可能性が高い。
--中国はレアアースの価格下落を受けて、有数産地での生産を停止するなど、価格引き上げを狙っている。日本企業が再び調達に窮する心配はないか。
まったくないと思っている。中国は資源ナショナリズムに走り、レアアースを外交の武器に使うという見方が有力だ。しかし、日米欧が共同して供給確保の研究会を開くなど対策を急いでいる。
中国がレアメタルにかけている輸出規制については、WTO(世界貿易機関)の最終審に当たる上級委員会が協定違反との判断を下した。これにより、中国は15カ月以内に制限措置の改善を迫られることになる。この結果を受けて、レアアースの輸出規制についても、WTOに提起される可能性がある。
また、中国以外の地域での生産が今後数年内に急増してくるだろう。レアアースを使わなくても済む、代替技術の開発なども進展している。中国は、ちょっと締め付ければ日本はおとなしく言うことを聞く、と甘く見ていたのだろう。それが裏目に出て、中国包囲網が形成された。