レアアースの第一人者、中村繁夫が語る未来 急変するレアアース市場 中国への依存度は激減へ
しかし、近年はこの限定された市場構造が崩れる可能性が高まっている。確かに現時点では中国が生産の9割以上を占めているが、鉱石そのものは世界各地にある。
レアの意味は現時点での生産量の話であり、世界の埋蔵量は9900万トンあると推定されている。09年の採掘量が12万4000トンだったので、仮に採掘量が倍になったとしても、可採年数はまだ400年もあるということだ。
埋蔵が確認されていて、早期に生産開始が有望視されるのはオーストラリア、北米、インド、ベトナムなどだ。実際に当社にも、こうした国でレアアースの生産を手掛ける企業から盛んに売り込みが来ており、中国の価格支配はいつまでも機能するわけではないと見ていた。
密輸価格に引きずられ正規価格が暴落
実は中国政府のコントロールもあまり効いていない。中国政府は10年7月に輸出枠を一気に4割削減。同年9月に尖閣問題が起きたのを利用してレアアース輸出を凍結した。11月には輸出が再開されたが、輸出を抑制するスタンスは継続している。
一方で、政府の目をかいくぐって、けっこうな数の中国人密輸業者が日本に入り込んできている。その証拠に、日本のレアアースの使用量は、正規の中国の輸出量を上回っている。また中国で採掘したレアアースを、ベトナムを経由することで日本に輸出しているような例もある。中国政府はトップダウンで方針を変えていく。鉱山関係者も、政府に振り回されて迷惑しているのだ。