「同意なき買収」を巡って難しい立ち位置に立たされているメガバンクグループのジレンマとは?

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取引が顧客の意にそぐわない結果となった際に、両サイドに立っていた場合は信頼を失うリスクが付きまとうからだ。特に、同意なき買収の局面では顧客それぞれに不信感を抱かせかねない。

信頼失うリスク

モーター大手ニデックが事前協議なしに仕掛けた工作機械大手の牧野フライス製作所への買収攻勢では、三井住友銀行が厳しい判断を迫られた。ニデックは後にTOBを撤回したが、関係者によると、三井住友銀は買収成立後のニデックへの融資を準備していた。

一方、牧野フライスのホワイトナイト候補の買収ファンドからも融資要請を受けて検討したものの、最終的に見送った。銀行内部で情報隔壁を設けた上で、敵対する双方への資金供与の是非が問われる局面となった。

関係者によれば、三菱UFJ銀や三井住友銀のケースは、銀行側が積極的に提案したというより、顧客の要請に応じざるを得なかったというのが実情だ。

昨年にも両社は、M&Aで反対側に立った陣営から資金支援を求められ、断ったことがある。敵対する陣営双方への対応が課題となる中、金融機関は個別案件ごとに判断を迫られる難しい立場に置かれている。

三菱UFJと三井住友銀は、それぞれ個別の案件についてはコメントを控えるとした。

こうした三菱UFJ銀や三井住友銀の動きとは対照的に、みずほフィナンシャルグループは、対立する両陣営への同時関与は原則として避ける方針だ。情報隔壁があるとはいえ、顧客の信頼を損なう恐れがある以上、あえて「一方のみに付く」という選択が結果的に信頼維持に資するという考え方に立っている。

従来、メガバンクは敵対的な買収への関与を極力避ける傾向にあった。しかし、同意なき買収は経済産業省も認めた買収の手段となった。お墨付きを得た企業の変化に押される形で、メガバンクのスタンスは多様化しつつある。

ただ、「攻め」と「守り」の両方に関わる戦略が長期的に受け入れられるのかどうかは見通せない。一歩間違えれば、顧客の信頼を失いかねないリスクもはらむ。それぞれの買収にどのように関与するのかという経営判断は、これまで以上に難しくなりそうだ。

著者:布施太郎

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