「ナウシカ」も「ファイナルファンタジー」も! 尾上菊五郎が挑戦する新作歌舞伎のかたち。襲名後も「人生が豊かになる作品を作りたい」
演出のG2さんと原作に忠実に構築していき、宙乗りや立廻りも物語の意図に繫がるように、と。本水(ほんみず)の立廻りは立師(たてし)の(山崎)咲十郎さんと(尾上)菊次が見事に作ってくれて。
初日が開いて3日目に怪我をしてしまいましたが、その日の夜にはみんなで話し合い、翌日には幕を開けられた。全員がもつ古典の力で突破できたと思います。
ゲームから誕生『ファイナルファンタジーX』
壮大という意味では、『ファイナルファンタジーX』(2023年3〜4月IHIステージアラウンド東京)もそうです。
きっかけは、コロナ禍に久しぶりにゲームをしていた時に、この作品で前向きになれたこと。最初はばらばらだった人たちが徐々に心を通わせ、巨大な敵に対して手を携えて向かっていく。この作品に描かれている壁を乗り越えた先にある未来への希望を、歌舞伎を通して多くの人と共有できたらいいなと。
不要不急と言われた演劇ですが、芸術や文化には力があると、私は信じています。ゲームを制作するスクウェア・エニックスさんに、その思いをビデオレターにして送ったんです。
本作はこれまでとはまた違った挑戦となりました。中央にある客席が回転し360度で展開される舞台、美しい映像、最先端の技術と歌舞伎との融合。
キャラクターについては、歌舞伎に翻案するというより、原作のキャラクターに歌舞伎役者の体を入れる、ということを意識しました。斬新な企画でしたから不安も大きかったですが、(中村)獅童さんはじめ皆が一丸となって作り上げた興奮と感動が鮮明に残っています。
新作では、日々修練に励んでいる名題(なだい)さんや名題下(なだいした)さんと一緒に芝居を作っていけることも嬉しいです。全員で歌舞伎の力を信じて一つの作品を作り上げていく。
その芝居が再演を繰り返して、ブラッシュアップを重ね、いつか古典作品と言われるようになったら。歌舞伎にはその懐の深さがあると、新作を作るたびに感じます。
これからも、幅広い方々に歌舞伎の魅力を伝えられるように、時代性、普遍性、人の心を大切にしたテーマを選び、歌舞伎役者のもつ身体性、技芸が活かせる新作を作っていきたいですね。
【前の記事】親子同時襲名「尾上菊五郎」が11歳の息子「菊之助」へ伝えたい言葉。歌舞伎役者として生きる《宿命》、親子で乗り越える葛藤の日々
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