「ナウシカ」も「ファイナルファンタジー」も! 尾上菊五郎が挑戦する新作歌舞伎のかたち。襲名後も「人生が豊かになる作品を作りたい」

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『NINAGAWA 十二夜』の後、まずは古典で研鑽を積むことが必要と感じたこともあり、次の新作『マハーバーラタ戦記』(2017年10月歌舞伎座)まではだいぶ時間があきました。

これは、宮城聰さんが演出するSPACの『マハーバーラタ〜ナラ王の冒険〜』(2014年)をKAAT神奈川芸術劇場で拝見し、衝撃を受けて、ぜひ歌舞伎にしたいと思ったんです。

インドに足を運んで体感した親和性

神と人間の壮大な物語を描いたインドの古代叙事詩ですが、『日本書紀』や『古事記』に通じるところがあり、親和性を感じました。鶴屋南北も河竹黙阿弥も前世の宿業が現世に影響する物語を書いていますし、人間の業、それを背負ってどう生きるかのような古典のテーマともリンクします。

宮城さんはSPACではあえて戦争の話を避けた部分を取り上げていたのですが、歌舞伎にするならば、戦を避けずに立廻りや御家騒動の話にしようと、決まっていきました。迦楼奈(かるな)という役には、どこか『義経千本桜』の知盛と似た構造があると思います。

2023(令和5)年11月歌舞伎座『極付印度伝 マハーバーラタ戦記』迦楼奈=尾上菊之助(現・八代目菊五郎)(写真:©松竹)
極付印度伝 マハーバーラタ戦記
2023(令和5)年11月歌舞伎座『極付印度伝 マハーバーラタ戦記』。左より、ガネーシャ=尾上丑之助(現・菊之助)、那羅延天=尾上菊五郎(写真:©松竹)

宮城さんはとても柔軟な方で、歌舞伎役者の発想を大事にしてくださいました。なおかつ、インドの哲学、思想からは絶対に逸脱しない。そして、音楽の使い方が素晴らしいんです。見事に心情と美しく結びついていく。

公演前にはインドへ行き、ガンジス川での沐浴や、日没後に行われる「アールティ」というお祈りを見学しました。私もお祈りに参加して、大丈夫かなと思いつつ、現地の神聖なやり方に則らなければと、ガンジス川の水を飲んだんです。

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