名物賃貸・高円寺アパートメント8年の軌跡。「住人同士は“ご近所さん”、その距離感が心地いい」マルシェ・食事会などで育てた日常は今
「例えば、 普通の一人暮らしで、オンラインで仕事していたら、 本当に誰とも会話しない毎日だったと思うんです。でも、ここだったら芝生に出たら誰かしらと顔を合わせるし、屋外だからちょっと距離を保ちながら、 おしゃべりしたりできる。
日常の中に誰かと顔を見て話をする。そんな当たり前への安心感があったと思います。ああ、これまで私たちがやってきたことは間違いじゃなかった、って実感しました」

関わりの濃度は変化し続けるグラデーション
とはいえ、高円寺アパートメントは賃貸住宅だ。仕事の都合で住み替えたり、子どもが小学校入学のタイミングで手狭に感じ、住み替える世帯は多い。新しく入居してきた住人のなかには、既に出来上がった人間関係に躊躇してしまうケースもあった。もちろん全員が全員、こうしたコミュニティに参加しているわけではない。

「2割ぐらいの方は、ほとんど参加しません。でもそれはそれで良いと思います。それでも防災に関する催しには参加する方もいますし、新しく入居してきた方には、『フリマで1品だけでも出店してみては?』とか、本当に小さなイベントで負担のないものからお声かけします。
すごくコアに参加してくださる方はいますが、関わり方はグラデーションです。とはいえ、同じ住人なのに、イベントを運営するホスト、遊びに来るゲスト、といった関係性にはしたくないんですよね。また、常に住人が変化することは、常に新しい風が吹いて、良いことだと思います」(宮田さん)
関わり合う人は徐々に変わっても、“人と人がつながる場”が持続しているのはなぜだろう。
「それは、とにかくサラちゃんがいることが大きいと思いますよ」とは、前出の住人みゆきさん。
「例えばコーポラティブ住宅なら、住人がすべて同じような熱量でイチからつくらなければいけないじゃないですか。その分、自由でもあるけれど、大変でもある。ここは、軸になるサラちゃんがいてくれるので、関わり方はその都度、自分で選ぶことができるんです」(みゆきさん)

住人は変わっていくが、実は、引越していった元住人のなかには、マルシェなどのイベントごとがあれば顔を出す人も多く、すでに「ご近所さん」の枠を超えた友人になっている人たちも多い。
現在、隣接する土地に、新しい賃貸住宅を建設中。しかも、こちらは主に単身用住宅。屋上や共用ラウンジもあり、1階のラウンジは、既存の住人も利用可だ。
「既存の高円寺アパートメントは主に2人暮らし、3人暮らしといった家族向け住宅でしたが、今度はシングル層が多いでしょう。属性の違う関わり合いがどんなふうに育っていくのか楽しみです」(宮田さん)
取材・文/長谷井涼子
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