名物賃貸・高円寺アパートメント8年の軌跡。「住人同士は“ご近所さん”、その距離感が心地いい」マルシェ・食事会などで育てた日常は今

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一方で、実はあまり事情を詳しく知らないまま引越した、ひろきさん。引越しの1週間後、ほかの住人たちに近所で開かれた盆踊りに誘われ、参加した。

「その帰り、そのままご近所さんがうちに集まることになったんです。総勢約20名。どうも元の住人が住んでいたころは、うちの部屋が住人達のたまり場なってたみたいなんです」(ひろきさん)

ほぼ自分だけ初対面、いわば完全アウェイの状態だったひろきさんだが、むしろこの状況を楽しんでいたそう。「本当に、コミュニティの過剰摂取(笑)。僕は以前の住まいもシェアハウスだったこともあり、人との交流はウェルカムの性格なので、すごく面白いと思いました」

住人たち
これが盆踊り後の写真。まだ入居間もなく、家具もそろっていなかったなかでの宴会となったそう。同じ物件に暮らす人だけでなく、元住人も含めて住人たちが大集合(画像提供/本人)
靴がいっぱいの玄関
こちらはマルシェの打ち上げも兼ねて、たくさんの人が集まった日の玄関。靴が多くて、ドアが閉まらない。玄関という境界が無くなった日(画像提供/本人)
流しそうめん
「流しそうめん」も恒例行事。「里山に竹を取りに行くのを手伝ったこともあります」(ひろきさん) (画像提供/高円寺アパートメント)

住人たちが自分たちで生み出す、“余白”

「建築の学生時代から『暮らしを開いてまちと繋がること』『人が生き生きと人や空間と繋がること』をよく考えていました。でも、実際はよく耳にするコミュニティーという言葉に半信半疑でした。

設計者が可能性を感じて意図的に人が集うことができる場を設けても、必ずしも活用されるとは限らないじゃないですか。でも、ここでは敷地の隅から隅まで住人や近隣の方に使い倒されているではないか、と感動します。

それは“つくり込まない”こと。住人たちが自分たちで生み出す、“余白”のようなものが、この高円寺アパートメントにはあり、ゆるく全体を繋いでいるのだと思います」(みゆきさん)

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