蔦重と「喜多川歌麿」タッグ組んで挑む"新境地" 浮世絵美人画には《超強力なライバル》… そこで蔦重が目をつけたもの
さて、多色刷狂歌絵本『潮干のつと』は「潮干狩りの土産」という意味です。
同書を見ると、画面上部に、狂歌が複数書き込まれています(36人の狂歌師の絵が記される)。そして画面下部には、さまざまな色をした貝殻が描かれています。
潮干狩りの様子や貝殻を描いただけと言えばそうなのですが、多色刷ということもあり、色とりどりの貝殻が美しい。
歌麿の作品にはさまざまな感想も
朱楽菅江と彼が率いる狂歌師たちは、袖ケ浦(千葉県中西部)で、潮干狩りにちなんだ狂歌会を開催。この歌会で詠まれた狂歌と、歌麿の絵を組み合わせて制作されたのが『潮干のつと』なのです。『潮干のつと』の刊行を企画したのが、蔦屋重三郎だったと考えられています。

先述の歌会に重三郎が参加したかは不明ですが、歌会を狂歌本出版に結び付けていくのは、重三郎の得意芸なのです。
『潮干のつと』は「歌麿の美しい絵画をバックに、当世を代表する狂歌人の狂歌が36首も並ぶという超豪華な構成」「見事な装飾を凝らした中世貴族たちの和歌集を連想」「和歌における歌合わせの古典的形式の1つである貝合わせを踏襲」と評される一方で「狂歌をつづった書がどうしても煩瑣な印象を与える」と批判されたりもします(松木寛『蔦屋重三郎』講談社、2002)。「反省点」はあったのです。
(主要参考引用文献一覧)
・松木寛『蔦屋重三郎』(講談社、2002)
・鈴木俊幸『蔦屋重三郎』(平凡社、2024)
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