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「トランプ関税」はアメリカと世界を殺して終わった、そしてアメリカ社会は、これからさらに荒れることになる

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  • 小幡 績 慶応義塾大学大学院教授
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実際に起きたことは、関税回避のための投資の意思決定、そして、その必要がなくなりそうであることからの躊躇、計画実施延期である。だから、アメリカへの生産回帰への貢献は、ほぼゼロである。

一方で、アメリカ以外の地域での生産、とりわけアメリカへの部品輸出のための生産は、一時停止、縮小だったから、生産は落ち込んだ。採用も減少したはずだ。つまり、様子見のために経済は止まった。まだ90日の猶予期間にすぎないから、撤廃したわけでないから、まだ止まり続けるだろう。

もうトランプ大統領に大したことはできないと思いつつも、信頼は失われ(もともと低かったとしても)、さらに、クレイジーさ、理不尽さ、ディールがうまいのではなく、実は下手な単なる強欲わがまま爺にすぎなかったことはわかってしまった。

しかし、一方で、最終的に関税措置を撤廃するまでは、自滅的なトランプ大統領は何をしでかすかわからないというリスクシナリオは消せないから、慎重姿勢は崩せないだろう。やはり、経済は3カ月仮死状態となってきたのであり、あと3カ月前後、仮死状態は続く。

景気は、実体経済においてもバブル的な好景気からの失速が始まっていたが、それが確定的になり、また必要以上に急速に失速する。となると、オーバーシュートも大きくなる。だから、不況は、トランプ関税騒動がなかったときよりも、深く長くなる。

「目覚めた欧州」も日本も、実質的に貧しくなる

一方、長期的な外交関係も大きく傷ついた。欧州とアメリカの傷は癒えないだろう。ウクライナをめぐって、欧州はトランプ大統領からもウラジーミル・プーチン大統領のロシアからも離れ、ウクライナ寄りになったとしても、根本的なアメリカへの不信、嫌悪感は潜在的にあった。だから、決定的に固定化され、戻らないだろう。

欧州が地政学的に自己責任に目覚めたというプラス要素はあるが、経済的にはそれはマイナスでしかない。ドイツは、国防費増加がGDPにも株価にもプラスのように言われているが、これは嘘で、GDPがプラスでも、実質的な豊かさにはマイナスだ。

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