CSR企業ランキング2012・トップ700 1位富士フィルム、2位トヨタ

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CSR企業ランキング2012・トップ700--“信頼される会社”は1位富士フイルム、2位トヨタ

「信頼される会社」をCSR(企業の社会的責任)の取り組み内容と財務データから選ぶ「CSR企業ランキング」。6回目となる今回は富士フイルムホールディングスが昨年の4位から初のトップとなった。過去5回のランキングはすべて上位10位以内だが、3位以上になったのは今回が初めてだ。

■最新および過去のトップ10位ランキング

■総合ランキング トップ700社

■部門別ランキング

・CSR企業ランキングの算出方法等の詳細

富士フイルムの総合ポイントは554.2点。ただ、部門別では雇用24位(87.9点)、環境11位(95.6点)、企業統治+社会性5位(98.4点)、財務10位(272.3点)と突出している部門はない。だが、バランスよく得点を挙げ総合力で頂点に立った。

最も高順位だったのは「企業統治+社会性」の5位。公益信託「富士フイルム・グリーンファンド」を通じて多くのNPO・NGOの活動・研究支援の実施、低価格デジタルカメラを開発し発展途上国などで販売するBOP(ベース・オブ・ピラミッド)ビジネスへの挑戦、「ビジネスの利益よりコンプライアンス優先」といった高いレベルの行動規範の存在、など幅広い取り組みで高い評価となった。

一方、上昇余地が大きいのが雇用。女性管理職数は26人(比率1.5%)と男性1729人に対して圧倒的な少数派。女性部長職はさらに少なく2人(同0.5%)。外国人の役職登用状況は管理職、部長職などを含めすべてゼロ。障害者雇用率も1.8%と法定ギリギリだ。

多様な人材を登用するための専任部署は設置しているが、その実現はまだまだ。ただ、平均勤続年数は男性17.8年に対して女性18.7年。子育て支援など勤務柔軟化の諸制度も充実している。女性社員にとっては、働きやすい環境であるようだ。今後はさらに一歩進んで女性をはじめとする多様な人材を管理職として活用できるかが課題となるだろう。

2位は昨年トップのトヨタ自動車。プラグインハイブリッド車など次世代環境車の開発・普及の取り組み、国内工場への風力・太陽光発電システムの導入、資源循環の推進、燃費向上等によるCO2低減など環境分野の活動は幅広く、例年どおり環境は高得点となった。

さらに、積極的な被災地支援など社会的な取り組みもこれまで以上に行っており、「企業統治+社会性」の得点もアップした。ただ、財務は昨年の279.0点から269.1点へと約10点も下がり、これがトップ陥落の大きな要因となった。

3位はソニー。雇用1位、環境5位、企業統治+社会性2位と各部門トップクラス。だが、3年連続赤字などで財務得点は悪化し、順位を昨年2位から一つ落とした。

4位は一昨年18位、昨年7位と着実にランクアップしてきた富士通。「2020年度末、新任幹部社員に占める女性比率を20%に」という目標を掲げ女性活用にも積極的に取り組む。女性部長数が77人と全体で日本IBMに次ぐ2位になるなど着実に成果も出始めている(参考記事 女性部長数ランキング・トップ69)。

以下、5位シャープ(543.4点)、6位デンソー(542.8点)、7位富士ゼロックス(539.4点)、8位リコー(538.9点)と続く。

今回大きく順位を上げた企業はNTTドコモ(25位→9位)、武田薬品工業(37位→11位)、KDDI(33位→17位)、コマツ(30位→19位)などだ。

NTTドコモの9位は製造業以外での過去最高順位。積極的なステークホルダーとの対話やコンプライアンス面での取り組みなどで「企業統治+社会性」の得点が上昇し高評価となった。ほかにもライバルのKDDIが17位。環境活動なども積極的な総合商社の三井物産(17位)、三菱商事(19位)もランキング上位になるなど製造業以外の顔ぶれが増加している。

ただ、全体で見ると上位企業はまだ製造業が中心だ。100位までの業種別集計では電気機器/精密機器23.0%。パルプ・紙/化学13.0%。輸送用機器10.0%という順で社数が多い。この3業種で46%と半数近くを占める。500位まででは電気機器/精密機器18.0%、パルプ・紙/化学10.8%、卸売業7.2%、輸送用機器7.0%という順になり、業種も多少変化するが製造業が優勢であることは変わらない。

では、各業種のトップはどのような企業なのだろうか。各業種のトップ企業一覧をまとめた。ほとんどが50位以内に入っているが不動産業・三菱地所(101位)、サービス業・NECフィールディング(106位)の2社は100位以下となった。

各業種については上位最大20社のランキングも掲載した。この中で上位企業が圧倒的に多い業種は電気機器/精密機器。1位のソニー(総合3位)から20位東芝テック(総合79位)まですべて100位以内。一方で前述のように不動産業とサービス業は100位内に1社も存在しない。

■業種別集計表
■業種別ランキング1
■業種別ランキング2

ただ、この結果から「不動産業やサービス業はCSRが遅れている」とは考えないほうがよいだろう。CSRは業種によって行える活動に差がある。たとえば、サービス業では環境活動をメーカーと同じように行うことは不可能だ。比較的女性の人数は多いが、有給休暇などの取得は一般的に少ない。このように業種による差は大きい。

CSRの取り組みは業種や規模によって可能な活動範囲は異なる。そのため、そうした活動を評価するランキングも総合順位だけでなく業種別のランキングも合わせて見ておくことが大切だ。たとえ、総合ランキングが中位でも業種内でトップクラスであれば、その企業は高く評価されるべきである。

総合ランキングで除外されている金融機関も同業内で比較した。金融機関は財務データを除いた「金融機関ランキング」を作成、上位30位までご紹介する。1位は東京海上ホールディングス(270.6点)。2位日本興亜損害保険(268.0点)、3位損害保険ジャパン(266.1点)と損害保険会社が上位を独占した。損害保険は本業がリスク管理や環境保全など損保ビジネスと関連性が高い分野も多く、CSR活動にも積極的な企業が多い。そのため、バランスよく得点を挙げ上位になった。

■金融機関CSR企業ランキング

冒頭でご紹介した部門ごとのランキングでは、財務データはCSR企業ランキング該当会社だけと全上場企業を対象にした2つのパターンをご用意した。後者は上位200社までを対象としている。それぞれCSR企業ランキングの総合順位も掲載しているので参考にしていただきたい。

このようにいくつかの切り口でランキングを眺めると、さまざまな「CSR先進企業」を見つけることができる。総合ランキング上位企業だけが「信頼される会社」でないことには注意が必要だ。
(財務・企業評価チーム 岸本吉浩 写真:今井康一 =東洋経済オンライン)

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