「安さ競争」から「価値競争」へ。KDDI、既存ユーザーへの値上げと料金に応じた通信品質の差別化を導入

「安さ競争」から「価値競争」へ――業界の常識を一度に2つ覆した決断だった。5月7日、都内で開かれたKDDIの記者会見。松田浩路社長が発表したのは、従来ありえなかった2つの異例の施策だ。
1つは既存契約者に対する一律の料金値上げ。もう1つは「料金に応じた通信品質の差別化」という新たな競争軸の導入だ。これまで業界では、新料金プランへの移行は顧客の任意であり、通信品質は「同じ設備を使う以上、メインブランドとサブブランドで最大速度に差はない」という建前が守られてきた。この2つの常識を同時に打ち破ったのだ。
既存ユーザーへの値上げ適用という異例
auブランドの料金改定は8月1日から実施される。「使い放題MAX+」などの上位プランは税込330円の値上げとなる。
この強制的な値上げと引き換えに、低軌道衛星との直接通信「au Starlink Direct」、混雑時に優先接続できる「au 5G Fast Lane」、月15日分の海外ローミング無料など、付加価値サービスを標準装備する。
加えて6月3日からは新プラン「auバリューリンクプラン」も提供開始。これらのサービスに加え、「サブスクぷらすポイント」「Pontaパス」も含めた総合的な上位プランとなる。
この「既存ユーザーへの値上げ適用」は、国内通信業界の常識を覆す戦略だ。これまでの料金改定は新プランの提供という形で行われ、既存契約者は機種変更などのタイミングまで従来の料金体系で利用を続けることができた。しかし今回KDDIは、契約プランの切り替えを求めることなく一律で料金を引き上げると同時に、サービス内容も強制的にアップグレードする方針を打ち出した。これは異例だ。
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